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ビターチョコレート
第5章 愛しさと背徳の背中合わせ。
「話していると、時間経つのが早いね」

「デートの時間?」

「うん‥‥‥」

言いにくそうでも、
待ち遠しくて、
早くそっちに行きたいという、
表情のアユ。

「出ようか?
私も買い物して帰るよ」

「ごめんね。
マリちゃん」

「楽しんでね」

「有難う」

「今のアユちゃん、
一番可愛いよ」

「えっ⁉︎」

「恋する一生懸命な顔って、
女を一番可愛く魅せるね」

「有難う。
マリちゃん。
私ね、幸せだよ。
今、一番」


喫茶店を出てアユと別れる。
アユの後ろ姿を見送る。
振り返って笑う、アユ。

不倫の恋なのに、
浮かれてしまう女は、
寂しいですか?
憐れですか?


壊れた家庭で取り繕いながら、
息を潜めて暮らしている女に、
ひと時の魔法がかかるんです。

シンデレラを夢みて‥‥

女は、
ガラスの靴を落とさないように、
必死になります。

不注意で落としてしまったら、
粉々に壊れてしまうからです。
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