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吼える月
第33章 出芽
 

『おお、我の要請によくぞいらした。まずはくつろがれよ』

 ラクダが手をさしのべてそう言うと、蠍は砂ぼこりを上げ大きい音をたてて、崩れるように座ったようだ。


「お前朱雀なんだろ!? お前の方が下手なのかよ!?」

『我が神獣であろうと、この砂漠におるのなら助け合いが必要になる。助けてくれる存在に高飛車にはなってはいけぬ。謙虚に、謙虚に』

「つまり、ラックーが僕達に謙虚じゃなく高飛車なのは、僕達の方が蠍より下に見られているんだね」

 ぴぇぇぇぇ~


『ひっ!?』

「ワシよりも」


 テオンがため息をついた。


「よし、いいか!? これで二手にわける。今出てきたこの蠍には、俺とラックーと姫様、そっちにはテオンとシバとチビとワシ、以上!」


 ぴぇぇぇぇぇ!!


「なんだかオレのところには小さいのばかりだな」

「シバまで小さい言うの!?」

「ユエ、ユウナちゃんと一緒がいい~。むさいの嫌~」

「むさいって……なんでそんな言葉知ってるんだよ」

「ユエはこの蠍でユウナちゃんと乗る! 女の子同士がいい!」

「わがまま言うな! イタ公が襟巻きになっちまった以上、俺と姫様は心で会話が出来ねぇ。俺は姫様の武神将なんだ、姫様を守るのが使命。他人に任せてられるか。姫様は渡さねぇからな」

 独占欲に、男っぷりを上げてユウナに意識して貰おうと邪心も少し。


「サク……」

「お姉さん、そこぽっとしなくてもいいから。今惚気てる時間じゃないから。……しかし本当にこのふたり、なんで両思いになれないんだろう?」
 

 テオンのつぶやきは届いておらず。


「じゃあユエ、そっちに乗る!」

「お前が連れてきた蠍なんだからお前が乗れ。それにお前が本当に文字を読めるのなら、テオンが苦戦したら助けてやれよ」

「じゃあユエ、ラクダちゃん助ける」

『助けはいらぬ!』

「ラクダちゃん助けるの~」


 じたばたじたばた、ユエはサクに摘ままれながら手足を宙でばたつかせる。
 
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