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吼える月
第19章 遮断
 

『蒼陵に地盤沈下が起きて海に覆われたなら、そこあたりから青龍の鎮護力が弱まったのだ。原因はわからぬが、青龍を弱体化させるだけのものがあったということだけは事実』


「神獣の力を弱めることなんて出来るのか?」


『青龍が龍脈となっていた場合、山脈から地面に落ちる下の部分……"龍穴"と呼ばれる部分に青龍の力が渦巻いて活性化する。熟考型のあやつのこと、その部分が蒼陵国になるように、位置を考えて龍脈となっていたはずだ。

そして龍穴の中のさらに厳密な龍穴部分が、数年前でいう……青龍殿があった場所に相当する。青龍の神気の一番恩恵を受けられる場所なのに、なぜわざわざ場所をを移動したのか』


「それに渦の中など、現実問題、皇主から祠官への命令の伝達も思いきりやりにくいしな。一応祠官は、皇主に任命された国主なんだから、中央と行き来しにくい場所に引っ越したというのも釈然としねぇし、なんで皇主も駄目だしなかったのか。祠官が住まう祭殿の位置などどうでもいいのか? 

あと、予言の夜のために、祠官も武神将もここ1年、中央で顔合わせしていたというのに、蒼陵の奇妙な出来事を親父が知らなかったのも変だ」

 そう、ジウの豹変を含めた、蒼陵国の不可解な事象。

 もしもハンが事前に気づいていたならば――。
 
 蒼陵の祠官や武神将の動きがおかしいから気をつけよと、ハンは告げていたはずだ。


 蒼陵の変化が巧妙なのか、変化が最近すぎるのか。


『また、神気を乱す原因が、我の見立て通り龍穴という"場所"に関連があるのだとしたら、これから向かう先か、あるいはもうひとつの方かが、お前が記憶している地図における昔の青龍殿"跡"の可能性が高い。

そして、本来龍穴とは凄まじい力を感じるはずなのに、こんな朧程度しか我が感じぬということは、龍穴の本来の……龍脈から"落ちた"という場所ではあらぬからかも知れぬ。

しかし逆に言えば。どんな理由があるにせよ、わずかなりとも感じる力の起因が、龍穴の位置がほぼ変わっていないことに関係するのなら』


 イタチはサクに言った。


『姿を隠した青龍は、そのまま真下の、海の下にいるやもしれぬ』

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