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吼える月
第26章 接近
 
 話がおかしな方向へと傾いた気がして、サクは微妙な顔をジウに向けた。ジウは"まあ聞いていろ"と言わんばかりに、腕組みをして頷く。


「可愛らしく貴いおなごだった。彼女は神獣の力で守られた、結界の敷かれた紫宸殿をものともせずに現れた。その堂々たる振る舞い、そこからしてジョウガ以外に考えられぬ」

 うっとりとした顔で述べる祠官を見ながら、サクはちょいちょいとジウを近くに呼び寄せ、近くで小さな会話をする。


「祠官はああ言ってるけど、実のところその……女神ジョウガを、ジウ殿も見たのか?」

「いや私が、丁度警備兵に喝を入れていた時のようで……」

「そこから、青龍殿に怪しい気配を感じたのか?」

「それが全く」

「じゃあ外から入ったのか、その場にぱっと現れたのか、本当にいたのかいないのか、それすらさっぱりわからない状況ってことか?」

「左様」


 こそこそと話していると、奇異なる親子の視線が向けられ、祠官がコホンと咳払いをしたために、ジウとの会話を中断した。


 真実はどうであれ、多分祠官の思い込みで美化されすぎているのだろうとサクは思うが、青龍の力を持つ祠官にも武神将にも悟られずに、祭壇に入る者が本当にいたというのであれば、普通ではない。それだけは確かだ。

 ……それが幻覚でなかったら、の話。


「彼女がテオンの額に手をあてた。するとテオンの絶叫が鎮まった」


 テオンもまた、微妙な顔をサクに向けてきた。


「彼女は言った。このままテオンの病気を鎮めて生き長らえさせることは出来るが、それには代償を伴う。それでもいいかと」

 怪しい。代償を求めるあたり、とにかくなにやらその女は怪しい。

 普通、幾らなんでも一刻の主が、そんな怪しい者を――。

「勿論私はいいから、テオンを助けてくれと言った」

「言ったのかよ!? そんな胡散くせぇ正体不明な女に!?」

「ああ。藁にも縋る思いだった。それに彼女は、胡散臭いよりも神々しかった」

「そんな外見だけの問題じゃ……」


 祠官は笑いながら、サクを無視して話し始める。


「彼女はテオンを癒やすとこうも言った。"凶々しい赤き予言が真実になった後、黒陵、そしてこの蒼陵も滅びる。祠官よ、子供を生きさせたいのなら、今から言う通りにするのだ"と」
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