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大蛇
第16章 新たなミューズ
それから一時間後、ドナシアンがボーモン邸にやってきた。

この日は、オルガとデートをする約束を取り付けていたのだ。

「奥さまはご病気ですので、申し訳ありませんが、今日はお引き取り願います」

気を遣ったウィルが、ドナシアンに丁重に断った。

「いや、いいんだウィル。ドナシアンには本当のことを話そう」

ふいに大佐が二人の前に現れる。

「オルガは私を裏切って男の元へ駆け落ちした。

あいつはもう、ここに戻らないだろう」

大佐の目は氷のように鋭く、ぞっとするほど恐ろしかった。

「そうでしたか、お気の毒です。

もしオルガさんを見つけたら、強烈なおしおきが必要ですね」

しかし、ドナシアンはどこか楽しげだった。

官能的なオルガを失ったことは彼にとって残念だったが、

彼女のスキャンダルはドナシアンを激しく興奮させた。

きっと、これから面白くなるかもしれない…。

そんな胸騒ぎを感じていた。
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