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大蛇
第4章 色欲の問答
ルロイはまた、あの時と同じように闇の中に独りでいた。

何か光るものがあったかと思えば、それは大蛇の二つの眼であった。

「彼女」の眼は冴えわたり、一点の曇りも見られない。

だが、その眼は犬や馬のような無垢で優しいものではなく、鉱物のように無機質で堅いものであった。

大蛇のまなこに、畏れ戦くルロイの姿が映る。

彼は自分の怯える姿にはっとし、いつもの勇気を振り絞ろうと試みたが、どうしても恐怖が先に立ってしまう。

大蛇はルロイの心情を見透かすような目で彼を見つめ、口を開いた。

「私を怖がらなくていいのよ」

ルロイは驚き、大蛇を見つめる。

「あなた、無理をしているんでしょう?顔に書いてあるわ」

「俺は、何も無理などしていない」

「それは、あなたの中の『理性さん』はそうでしょう。あなたの理性はあなたの思うまま生きているわ。」

「その通りだ。だからお前に言われる筋合いはない」

「でも、あなたの『本能さん』は悲鳴を上げているわ。可哀そうに。カラカラに渇いて死にそうよ」

「そんなことはない。俺は十分満足している」

「本当?もしあなたが満足しているなら、こんな夢は見ないはずよ。あなたの夢に私が入ることができるのも、あなたが私の肉体を欲しているからなのよ」

「お前は誰だ、俺は誰も欲してはいない」

「私?私はあなたの欲望の対象よ。あなたの上官の・・・ボーモン大佐の妻、オルガ・ボーモン。それが私の本当の姿」

「嘘だ」

「嘘じゃないわ。いいから、少し私の話を聞いてくれないかしら。この姿が嫌なら・・・」

大蛇はそういうと闇の中に消え、入れ違いにオルガがルロイの前に姿を現した。

「久しぶりね、ルロイ」

オルガは艶やかな微笑を浮かべる。

ルロイはたじろいた。

いざ彼女を目の前にすると、その圧倒的な牝の匂いに目がくらみそうになった。

「やっぱりこの姿の方が好きなのね。ずっと会いたかったわ

ルロイは何も言えず、押し黙って彼女を横目で見ていた。

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