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大蛇
第11章 拳の制裁
妻の不貞の決定的な証拠を掴むために、

ボーモン大佐は執事のウィルにオルガを二十四時間見張るよう命じた。

務めを全うすることを重んじる生真面目なウィルは、

主人の言われた通りいつでもオルガを監視していた。

しかし、注視していることがばれないよう、あくまで隠密に事を運んでいた。

大佐はオルガの行動を阻止するのではなく、逆に掌で遊ばせようと目論んでいたのだった。

木曜日の夕方、オルガはこっそり裏口から出掛けていったのを、ウィルは見逃さなかった。

彼もすかさずオルガの後を追った。

オルガは目深に帽子を被り、顔を覆い隠していた。

彼女は途中で車を拾い、町はずれへと向かう。

ウィルもまたタクシーに乗り、オルガの車を尾行する。

十五分くらい進んだ後、「森のホテル」前でオルガの車は止まった。

ウィルはばれないよう屋敷から少し離れた地点で車を降り、正面玄関まで小走りで向かった。

木の陰から望遠鏡でホテル内の様子を伺うと、オルガはフロントで鍵を受け取っていたところだった。

ウィルは、今度はホテルの部屋に視線を注ぐ。

しばらくすると、三階の一つの部屋のカーテンが白い女の手により閉められた。

おそらく女主人だろう。

ウィルは息を殺し、深緑のカーテンを凝視していた。
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