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大蛇
第13章 最高に淫らな夜会
しかし、その夜会は罠だった。

緑色のドレスを着飾ったオルガは、罠とは露も疑わず、夫と共に車に乗った。

春の夜は温く、風が心地よかった。

オルガは珍しく意気揚々としていたが、車がクラフト邸の前を通り過ぎた時、嫌な予感が走った。

「クラフト邸には行かないのですか?」

「うん、残念ながらお断りしてきた。

 もっとお前の悦びそうな夜会に誘われたからな」

オルガの胸は早鐘を打つ。

これは罠?夫は何を企んでいるの?

「さあ、着いたぞ」

車はピストール邸の前に到着した。

オルガの表情は強張った。

ピストールは、かつてオルガとも何度か関係を持ったことのある男で、

妙なサロンを主催しているという噂があった。

オルガはすぐにでも逃げ出したかったが、

夫の有無を言わさぬ厳しい表情で立ちすくんでしまう。

「さあ、行こうか」

大佐はオルガの背中を押し、ピストール邸のドアを開いた。

「オルガ様、ボーモン大佐。お待ちしておりました」

眼鏡をかけたこの屋敷の主人が、慇懃な態度でオルガを迎えた。

ピストールは30歳の独身貴族で、どこかアンニュイな雰囲気があった。

贅沢な暮らしに飽きた彼は、サロンを主催することで気を紛らわせていたのだ。

「オルガさんから最近お呼びがかからないので、寂しい思いをしていましたよ」

オルガは一言も喋らなかった。ピストールの嫌に丁寧な物腰に、悪い予感しかしない。
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