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甘く、深く、繋がって
第15章 守りたい
「タクは何でも一人で器用にこなすので、頼まれ事をされたのって実は初めてなんです」
バックミラーに映る桐生さんがそう言って目を細める。
「それだけ河合さんに本気なんでしょう」
どこか嬉しそうな口調にトクンと心臓が跳ねた。

斎藤さんが、私に本気?

じわじわと頬が上気する。
「しばらくは辛いかもしれませんが、タクを信じて待ってあげて下さい」
「……はい」
優しい笑顔で運転する桐生さんに小さく返して、視線を車窓に移した。

桐生さんは何を知ってるんだろう……
『信じて』って言うって事は、やっぱりあの人が『やっかいな奴』なんだ……

『拓真と付き合ってるの、私だから』
当然の様に言い切られた。
斎藤さんがうちに来るのを『よろしく』って……

思い出すと鳩尾の辺りがソワソワする。
不安が押し寄せてくる。

違う。
斎藤さんは私を彼女だと言ってくれたもの。
大事にして、くれているもの……

信じると決めたのに、斎藤さんの愛に包まれてると思うのに嫌な感じ。落ち着かない。
「大丈夫、ですよ」
バックミラーを見上げると、桐生さんがさっきと同じ優しい笑みで私を見つめてくれていた。
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