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甘く、深く、繋がって
第16章 過ぎ去らざる戒め
啓太がバイトに出た数分後に突如聞こえた、ドアを開ける音と誰かを制止する男の人の声。怖くて布団の中で縮こまっていると、壮ちゃんが私の名前を呼びながら真っ先に駆け込んで来た。桜の花びらを髪にいくつも付けて、ホッとしたような、泣きそうな顔で抱き締めてくれた。あの時の壮ちゃんを忘れない。
外は春の嵐。桜が激しく舞い散っていた。

啓太とは離れられたけど、快楽を覚えた身体はどうにもならない。
啓太の言う「忘れられない」はきっと私にも当てはまる。
ハシタナく、厭らしい身体……

啓太はあの時に戻りたいの?

おかしくなる前の啓太は真面目で優しい人だった。捕まった時点で罪を認め、謝罪の言葉を口にしたと伝えられていたけれど……

「河合真純に二度と近づかない」
それが執行猶予が付いた場合の保険も兼ねて、啓太との示談に応じる条件だった。でも心配していた執行猶予が付くことはなく、示談に応じたにも関わらず、懲役七年の実刑判決が啓太に下りた。

まだ刑期の最中にある。
先日啓太が十分反省していて、模範囚でもある事から仮釈放の審査を検討したいと相談があった。それは予想されていた事で、壮ちゃんに絶対に応じるなと言われていた。だから、断った。彼は刑務所にいる、はず。
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