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甘く、深く、繋がって
第5章 燻るモノ
さっきよりも居心地の悪い空気。でもそれも届いたパスタの美味しさと、またも黒田さんの感想を述べる明るい声に何となく落ち着いた。
いや、落ち着いたのは山下さんと黒田さん。
畠山さんはどことなく不機嫌な感じで黙々と食べてるし、私は黒田さんに斎藤さんの事を話さなきゃいけない事に頭を悩ませていた。

この前はあんなに美味しかったのに……いや、もちろん美味しいんだけどね。
気持ちが落ち着かないと、味わいも半減?

食事を終えて、リップを直しに化粧室に入った。
チラッと伺ったキッチンに斎藤さんの姿はなくて、体格の良い大きな男の人にニコッと笑い掛けられた。

メールくれたから居ると思ったんだけどなぁ……

鏡で全身チェックして表に出る。
「真純」
すぐ横から聞こえた愛しい声。驚いて振り向くと少し奥まった先にある『プライベート』と書かれた扉の向こうから斎藤さんが手招きしていた。
「あっ」
残念に思っていた気持ちが跳ね上がる。
嬉しさのあまり後先考えずに近付いて、斎藤さんに腕を捕まれた。
「おいで」
甘い声と同時、腕を引かれた。
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