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五十嵐さくらの憂鬱。
第2章 …2
「樹、先輩…」

さくらがほっとするのと、
男たちの血の気が引くのが同時だった。

「えっと、樹さん、お久しぶりっす」

よそよそしい挨拶に、樹はすっと目を細めた。
ゆっくりとこちらに歩いてくると
男たちに冷たい笑みを見せる。

「で? いつまで俺の女に触ってるの?」

まさに鶴の一声。
全員がいっせいに手を離し、さくらはその場にへたり込んだ。

「いや、えっと…樹さんのとは知らなくて…つい…」
「つい?」

追い打ちをかける声音は冷たい。
その表情はとても柔和なのに
金属よりも冷ややかだった。

「あの…すみませんでした…」

その場の全員が、樹に向かって頭を下げる。
そのうちの1人、さくらの胸を鷲掴みにした男に近寄ると
樹はその手を優しく持ち上げる。

「誰が、触っていいって言った?」

空気が凍るとは、このことを言うのだと
ぼんやりとした頭でさくらは考えていた。

「手首から先、要らないってことかな?
切り落とされたいの?」
「…ひっ……!」

硬直した後に、膝が震え始めている。
言葉だけで、人がこんなにまで怯える姿を目の当たりにして
まるで映画のようで、現実感が湧かなかった。

「さくらは、俺のだ。
次何かしたら、指が無くなるか
大学から居なくなるかのどっちかだから」

全員が恐怖で押し黙る。
それに向けて、樹はにこりと笑って見せた。

「俺は寛大だから、どっちがいいか、ちゃんと聞いてやるから。
証拠は抑えてあるんだ。
怒らせたくなかったら、とっととカラオケに行きな」

蜘蛛の子を散らすように、
男たちが走り去って行く。
見えなくなるのを確認してから、
樹は道路にしゃがみこんださくらを覗き込んだ。

「…大丈夫?」

さっきとは別人かと思うような優しい声音で
乱れた髪の毛を手櫛で戻し、よれた服をきちんとした位置に戻す。

「さくらちゃん?」

うつろな彼女が心配になったのか、
さくらの髪の毛を耳にかけ、
その耳たぶを優しく撫でた。

そこはかつて、樹がさくらの心を乱した箇所だ。
ふ、と恐怖が遠のいた。

「…怖かった」
「よく頑張ったね」

樹はさくらの手を取り、優しく包み込んだ。
視界が滲んで、瞬きをすると
温かい涙がぼたぼたと手に落ちる。

「…移動しよう。ここじゃ冷えちゃうよ。
俺の行きつけのお店があるから」

言われるがまま、さくらは樹に従った。

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