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五十嵐さくらの憂鬱。
第2章 …2
「あれ。なんで…」
慌てた樹に抱きとめられ
さくらは床に尻餅をつかづに済んだ。

「大丈夫? もしかして、お酒弱い?」

熱い身体が自分のものではないみたいに力が入らない。

「この店のココア、ブランデーけっこう入ってるんだ」
「私、お酒飲めない…」

しばらくそうしていれば、
少し落ち着いてきて歩けそうだった。

「あ、お、お金!」

店を出た所で慌てるさくらに
樹は大丈夫だよと笑った。

「つけにしてあるからさ。心配しないで帰ろう。
家はどっち?」

樹にしがみつき、樹の腕が優しくさくらの背中を包む。
こんなこと、光輝はしてくれない。
比較するのは悪いと思っても
樹の優しさにときめかない女子がいたら見てみたいと、
さくらは本気で思った。

歩いていれば足元は大丈夫になったのだが
ふわふわと視界が揺れるのがおさまらない。
その間、樹と何か話した気がするが
すぐに忘れてしまう。

家につくと樹にベッドに寝かされた。

「今日はそのまま寝るしかないかな。
酔っ払いさん」

1人になるのも、
樹が離れていくのも怖くて
彼のネルシャツの裾をひっつかんだ。
驚いた顔で、樹がさくらを見る。

「先輩、やだ。行かないで」
「……いや、でも…」
「お願いします…」

根負けして樹はベッドの縁に腰を下ろすと
さくらの髪の毛を撫でた。

「さくらちゃん、次そういう顔したら
襲うからね」
「どういう顔…」

そういう顔だよ、と言う声とともに、
手首を捕まてれ固定されるのと
唇が重なるのが同時だった。

一度重なり、離れる。
そしてすぐさまもう一度、重なった。
身体中が熱くなり、さくらが空気を求めて口を開けると
その隙間から樹の舌が入ってくる。

「ん……っ」

今までさくらが経験したキスの
どれともそれは違っていた。
優しく舌を舐められ、
さくらの舌の上に円を描くように
樹の舌がゆっくりと撫でる。

ーーーどうしようーーー

キスをしてしまったことへの罪悪感よりも
キスがこんなに気持ちがいいと知ってしまった快楽のが優ってしまいそうになる。


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