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五十嵐さくらの憂鬱。
第5章 …5
まさかな。
そうは思ったものの
翔平は気になってしまって
午後の講義に集中できなかった。

「確かめてやる」

サークルには大切な用事があると言って
平謝りして抜け出した。
バスケ大好きの翔平が
休んだことなどなかったため
驚きつつも休ませてくれた。

ーーーどこだ、さくらーーー

携帯で呼び出したのでは意味がない。
美術部の部活の日というのを知っていたため
翔平は部活棟へと走り
息を落ち着かせてから
美術部のドアの方へと進む。

ノブに手をかけると
中から話し声が聞こえてきて、
翔平は耳をすませた。

「ごめんね!」

そんな声がして
翔平はゆっくりドアを開ける。
びっくりした顔のさくらの前に
先輩であろう女子が2人
さくらを拝むようにしていた。

「え…やめるって、そんな、急に困ります」
「ほんっと、ごめん!」

さくらは眉根をよせて
今にも泣きそうな顔だ。

「でも、就活がやばくってさ。
私は名前残しておくから、実質の部長やってくれないかな?」
「私はごめん、ほんとにやめちゃうんだけど…」

そんな声に耳をそばだてていると。

「青木くん、何やってるの?」

突如肩を掴まれて
翔平はぎゃあ!っと声を上げた。
見れば、稲田樹がきょとんとした顔で立っている。
その声に驚いた部室内の3人が
一斉に入り口に視線を向けた。


「…し、翔平!?」

さくらが慌てて立ち上がる。

「何してるの?」
「いや…その…」
「とりあえず、こんなところで立ち話もあれだから
中に入ろう?」

樹に言われるがまま
翔平は気まずそうに入る。
樹の姿を見た、副部長が肩を震わせたのを
さくらは見逃さなかった。

「…って、なんであんたがナチュラルに中入っちゃうんだよ!
部員でもなんでもないだろ?」

それに樹はにっこり笑う。
思わず翔平も一瞬見とれるほどの
色気たっぷりの微笑み。

「副部長の頼みで今日から部員になったんだ」

副部長と樹以外が驚きすぎて
ぽかんと口を開けた。

「俺もデザインとかは好きだしね」
「副部長、どういうことですか?」


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