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五十嵐さくらの憂鬱。
第6章 …6
「地味な女…」

それも、いいかもしれない。
樹は頭に?をつけた真綾に微笑み
地味な女狩りをすることを決めた。

校内で地味な女を見つけては
樹はひと気のないところへ連れ込んで脅した。
ちょっと脅すだけで
大抵の女は怯む。

サークル活動の見学と銘打っては
おしゃべりにふける文系部の地味な女たちの会話に
ちょこちょこと混ざって
特に地味な女を言いくるめては抱いた。

「驚いたもんだよ」
「何が?」

いつもの溜まり場にしている食堂の一角で
中学からの悪友、夏月に樹はぼやいた。

「地味な女の方が、大胆だったりするんだよ」
「あーそれな。俺も良く思う」
「ちょっとあんた達、何の話よ!?」

真綾が顔を赤くする。

「最近、樹はジミーずがお好みなんだろ?」
「えっ…!」

それに樹はニヤニヤしながらうなづく。
夏月もニヤニヤしながらうなづく。

「地味な女がすっげー淫乱だったりすると
めっちゃ燃えるよな。
ギャップもすごいし。
樹は新規開拓に励んでるんだ?」
「派手な女なんて尻軽なの見るからに分かったりするからな」

真綾が開いた口をわなわなとさせながら
樹の腕に身を摺り寄せた。

「なんで、私っていう女がいながら、他の子に手を出すのよ!」

その真綾を氷点下の瞳で見つめながら
樹は一言。

「お前、いつ俺の女になったんだよ」

真綾はショックのあまり固まる。
さっと腕を真綾から抜いて
樹は我関せずで夏月に視線を戻す。

「真綾、ご愁傷様。
樹王子は、1人じゃ物足りないんだよ」

夏月は気にせず笑い飛ばす。
ムードメーカーでいつも笑っている夏月がいたからこそ
樹は大きな犯罪を犯さなかったとも言える。

「で、どんなだったの、ジミーずとの情事は?」
「真綾がいる前じゃ、エグくて言えないな」

夏月がゲラゲラと笑い
気分を害した真綾は立ち去る。
食堂の入り口で、イラつく真綾の鞄にぶつかる人物。
樹の視線が、一気に集中した。

真綾の鞄によろけ、
持っていた温かい飲み物を手にこぼし
大慌てでハンカチを出して床を吹く。

「普通は、手を拭くだろうが…」

樹の独り言に
夏月が樹の視線の先を見つめて
そこに立つ女の子を認識した。

「樹、あの子が欲しいの?」
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