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第5章 月への道を

タクヤは明け方近くまで仕事をしていた。

「二時間は眠れるかな…。」

りえの眠っているベッドにそうっと入った。

温もりのあるベッドに入るのは心地良かった。
寝息を立てながら眠っているりえを
カーテン越しの月明かりで見つめながらタクヤは寝入った。

タクヤが寝入った頃りえは目覚めた。

目覚めた時に愛する人が隣にいる幸福感に浸りながら
ゆっくりとベッドを出た。

いつも通りにりえは母屋に行き朝食の準備を手伝っていた。
そして、いつも通りに子供を起こし、タクヤを起こした。

その後にまた母屋に戻りユウイチを起こしに
ユウイチの部屋をノックした。

ノックしたがユウイチの返事がなかった。

昨日、あんなに激しく抱き合って
疲れて起きれないのかと思いながらドアを開けた。

ベッドでユウイチは疼くまっていた。

「お義父さん？お義父さん！大丈夫？」
りえは慌てて新井を大声で呼んだ。

新井はすぐに近所のハウスドクターを呼んだ。

「どこが痛い？ここ？」
りえはユウイチの背中を懸命に摩った。

タクヤが部屋着のまま走ってきた。

「親父？痛むのか？」

病気だなんて思えないくらいにユウイチは元気で、
癌なんて嘘のようだったのに
確実に癌はユウイチの身体を蝕んでいた。

ハウスドクターは、ユウイチの様子を見て
痛み止めの注射を打った。

そして暫くすると、ユウイチの痛みも和らいだようで
そのまま眠りについた。

りえはこのままユウイチが目を覚まさないような気がして、不安だった。

ユウイチが息をしているか何度も確認していた。