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第5章 月への道を

風がガタガタと家の窓ガラスを揺らしていた。
廊下から見える月は白くりえには痛かった。

トイレに行き、洗面所で気持ちを整え
深呼吸をした。

部屋に戻るとユウイチは眠っていた。
りえは身体が痛くならないようにクッションを椅子の間に挟んだ。
そして、手を握りながら外の桜を舞う光景を見た。

「え？」
りえはユウイチに違和感を感じた。
「お義父さん？お義父さん！」

まだ暖かい手はダラリとした。

「新井さん！新井さん。」
りえは新井を大声で呼んだ。

「タクヤさん、お義父さんが…お義父さんが…」
タクヤを携帯電話で呼んだ。

「今まで話しをしていたのに…ちょっとトイレに行っていただけの間に…あああ！お義父さん？起きて！お義父さん。」

新井はすぐに医者を呼んだ。
タクヤは母屋にかけこみ
ユウイチを床に動かし心臓マッサージを始めた。

りえは立ちすくんでいた。

「どうして？どうして？」

医者も直ぐに来て、AEDを使った。

「いやっ、いやよっ。起きて！ダメよ。いやぁああ。」

タクヤは取り乱すりえを抱き抱えていた。