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第74章 出発前
「腰にキテんね」

嬉しそうにそう言って、羚汰がそのまま寝室へと引き上げるように連れて行ってくれる。

稜は、どう返事をしていいか分からず、違うことを聞き返す。

「羚汰、パジャマ...は?」

稜としては、布団に包まって眠るならまだしも、薄いタオルケットを腰のあたりに引っ掛けるようにして眠る時は何か身につけたい。

さっきまで着ていた夏用の部屋着は、もうダメになっている。

夏ということもあって、似たような洗い替えは沢山あるのハズなのだが。

「えー。着る?」

稜をベッドに座らせてから、エアコンをつけて、クローゼットで部屋着を掴む。

「そのままでいんだけどなー」

カップのついたキャミと、ショーツが手渡される。
ショートパンツは見当たらない。

「それでいいじゃん」

羚汰もボクサーパンツだけ履くらしい。

なんとかそれを着て、横になって手招きをしている羚汰の腕の中に入る。

まだエアコンが効いておらず、少しむっとした暑さがするが、それでもくっついて眠るらしい。

「暑くない?」

いつものようにぎゅうっと後ろから抱きしめられる。

「ヘーキ」

手も足も絡まって、羚汰の熱を感じる。

「稜は?暑い?くっついて眠るのヤ?」

「ヤじゃない、よ」

悲しそうな声が耳元でして、慌てて否定する。

「じゃ、もう寝よ」

「うん」

さすがの今日は、羚汰も疲れたらしい。

そのぐらいソファの上や、そのまま転がった床の上で何度も何度も...。

思い出しただけで、顔に火がつきそうだ。

「...今日の稜は、マジでヤバかったー」

羚汰も思い出していたのだろうか。

「あの映像、そんなに気に入ったんだ」

「違う!違うよ!!」

稜は、体をひねって羚汰に顔を向ける。

映像の中での自分の動きが、思ってたほどじゃ全然なくて。
それで必死になって腰を動かしていただけなのに。
撮影をするのが、ましてやそれを見るのが燃えるみたいに思われたら違う!

なんとかそれを伝えると、嬉しそうだが少し残念そうでもあり、複雑な表情だ。

「そっかー。それで、ね...」

羚汰の指が、短いキャミから出ている腰のあたりの肌を滑らかに移動する。

「あの腰つき、激しかったもんなー」

そう言って後ろから首筋にキスを落とす。

「ん...」
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