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第76章 いざ、イタリアへ
聞き覚えのない男性の声と、奇妙にも思える発音に驚きながら目を開ける。

至近距離に彫りの深い顔があって、驚いて体を反らす。

「リョウ?リョウ、タア...タカサーキ?」

そう発してしるのは、金髪に近い薄茶色のうねった長めの髪と、口元のワイルドな髭が似合う外国人で。
高い鼻と日に焼けた浅黒い肌に、白い歯が光っている。
目の色はー、サングラスを掛けているからわからない。

固まって動けず、何も発せずにもいると。

掛けていたサングラスを少しズラして、もっと近づいてくる。
透き通ったなんとも言い難い青いようなグレーのような瞳と、髪の毛と同じ色のふさふさのまつ毛が、彫刻のような顔の中で輝いている。

「リョウ〇△□〇×...」

リョウ、の後は、何か早口でまくしたてられて聞き取れない。

何だろうか。

スリではなさそうだが、新手のナンパ??

風貌からして、空港の人や警察とかではなさそうだし。
明らかに絵に書いたようなイタリアの遊人風で、怪しさ満点だ。

イタリア人っぽいけど、しゃべっているのは英語???

きょとんとしている稜に、むこうは軽く舌打ちだ。
今度は少しゆっくり喋ってくれているようだが、それでも聞き取れない。

イタリア訛りの英語なのと、稜の語学力ではさっぱり理解出来ない。

「ノー!ノー!」

わけも分からずとりあえず、否定してみる。
何かわからないが、関わらない方がいいと思えた。

少し落ち着いて考えたら、見ず知らずと人が稜の名前を知ってるはずがないと気づいただろうが、今の稜にはそんな余裕はない。

眉間にシワがぐぐっと入って怪訝そうな顔をしたその遊人が、顔の前で手を振る稜の手をがしっと掴む。

声も出せずに驚いていると、そのまま引っ張られ立たされそうになる。
その手を払おうとすると、向こうが自己紹介してきた。

「アレックス、マイネーム、アレックス!リョウ、フレンズ」

大きな声でそこはハッキリ聞こえたので、稜は逃げようとする体を止めた。

「...フレンズ?」

「シ!シ!...アイム、アレックス。ユウ、リョウ、ライッ?」

逃げないと安心したのか、掴んでいた手を離して、その手で自分を指して、次に稜を指す。

「い、いえす...」

アレックス?...アレックス??

どこかで聞いた事あるようなー。
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