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第76章 いざ、イタリアへ
皆に促されてダイニングの椅子に座る。

椅子を引いてくれる人。
パンを取り皿に取ってくれる人。
布のナプキンを広げてかけてくれる人。
まるで王様にでもなったかのような扱いだ。

そして口々に自分の名前を言って握手を求めてくる。
稜にもわかるように、自分の顔や胸に手をやりながらゆっくりしゃべってくれる。

「レベッカ」「ラウロ」「ナタリア」「ファビオラ」「ラウロ」「ルカ」「ジェンナ」「エルマ」などなど次から次へ。
到底覚えれそうにない。

軽くパニックになっていると、絞り終えたジュースをグラスに入れた羚汰が何やらしゃべりだして、その場が収まる。
何を言ったのかわからなかったが、みんな笑いながら納得してくれたようだ。

羚汰がテーブルの上に搾りたてのジュースを置いてくれる。

「ありがと。いただきます」

爽やかな香りと濃厚な甘さが口に広がる。
思ったより甘くて、喉も乾いていたからごくごくと飲み干した。

「自己紹介は、あとでゆっくり説明するから。まずは食べて。俺も食べる」

羚汰も隣に座り。
あと何人かも、じゃあ私も食べよう。と言ってるのか座ってきた。
大きなダイニングテーブルには10人ぐらいが軽く座われそうだ。

テーブルの上には、クロワッサンのようなパンや、カットしたフルーツなどが並んでいる。

クラウディアさんも皆も、ほらほら食べろと言っているようだ。

「クラウディアの手作りパンは美味しくて、皆大好きなんだよねー」

「美味しい!」

香ばしい小麦の香りと、甘いバターの香りだろうか。
ほっこりなる優しいパンだ。

日本語で言ったのだが、皆に伝わったらしく軽く歓声が起こっている。

そこからはわいわいと食事が進んだ。

「羚汰は、いつごろ着いてたの?」

「んー1時間ちょい前かな」

最寄りの駅にほど近い所に住む、クラウディアさんの親戚にあたるルカさんファビオラさん夫婦にこの家まで送ってもらって来たらしい。
その二人はリビングで他の人たちと談笑している。

「そうなんだ。起こしてくれればよかったのに」

知らずにぐーぐー眠っていたのが恥ずかしい。

「起こしに行ったよ?そしたら、鍵かかってるし。ドアも叩いても叫んでも全然気付かないし~」

そうだったんだ。

昨日、クラウディアさんに鍵をかけるように言われて、椅子でつっかえまでしたから入りようがなかったらしい。
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