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第77章 異国の地
「ちょっと、羚汰。街中だから」

「大丈夫!イタリアじゃ、フツウだから」

そう言って、ぎゅうっとする腕に力が入る。

確かに、誰も気にしてない。
あっちの年配カップルはキスしてるし。

羚汰の匂いが鼻をくすぐる。

やっぱりいい匂い。

イタリアの空気に羚汰の匂いが、とても似合っている気がする。

うっとりしていると、少し動いた羚汰に首元をがぶりと噛まれる。

「な゛!!」

びっくりして変な声を出すと、羚汰がげらげら笑って離れた。

「...噛んだ!!」

「うん。噛んだねぇ」

笑いながら手を引っ張ってまた歩き出す。

甘噛みよりも強く噛まれて、跡が残りそうだ。
見渡しても鏡はないし、このあたりの商店のガラスは汚れてて覗き込んでも姿がはっきり見えない。

「びっくりした!なんで噛むのっ」

噛まれたところをさすりながら、引っ張られて歩き出す。
前を歩く羚汰の顔は見えない。

「だって、そーでもしないと襲いそーだから」

少しだけ振り返った羚汰の顔が赤い。

我慢、してるのだろうか。

「そっか...」

なんだか納得して、それから何かにふと気づく。

「でも噛まなくていいじゃん!!」

「あはは。だね。ごめんごめん」

空いてる手で、羚汰の肩をグーパンチする。

今度振り返った羚汰は、少なくとも見た目はフツウに戻っていた。

「いてっ!」

「噛んだのもっと痛かったし!」

「ごめんってー」

肩をくっつけるようにして、いつものように歩き出す。

「わ、人だかり」

程なく目に付いた人だかりに驚いていると、羚汰が楽しそうに教えてくれた。

「あそこが、目的のピザ屋。“du Luca(デルーカ)”だよ」

もうとっくにお昼は過ぎているのに、お店の前にはわやわやと人がいて。
並んでいるのだか、何かを待っているのか。

人混みをかきわけて店頭に行く。

間口の狭いお店で、店頭にお持ち帰りのパンが並んでいる。
そのショーウィンドウに立っている、人物が羚汰に気づいたようで、驚いて動きが止まる。

「Tito!!!」

それまでも比較的大きな声で何かを言っていたようだが、途端に声量とスピードがアップして、羚汰に何か話しかけ。近づいて軽くハグした。、

羚汰が笑いながら、「シ!シ!」とか言うと、また喜んで。奥に居るだろうほかの店員たちに、どうやら早口で何かを伝えている。
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