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第79章 魅惑の島
少し離れてはいたが、稜の声が聞こえたのだろうか。
奥さんが振り返って、旦那さんも振り返り、2人で手を振ってくれた。

稜も思わず手を振る。

「何やってんの?」

くすくす笑う声が耳元でした。
いつの間にか、羚汰が背中に回って稜の腰に手を回している。
それを少しくすぐったく感じながらも、街角に消えていった夫婦のあたりをぼんやり眺めていた。

「素敵じゃない?あの御夫婦」

腰を抱かれたまま振り返ってそう言うと、すかさず唇が重なる。

「ん...、羚汰」

「何?」

甘ったるい声がまた耳元でして、舌が耳の淵を舐め上げる。
このまま、止まらなくなってしまう。

「...お腹空いた」

ぶっと吹き出して、羚汰が笑い出す。
だってこうでも言わないとキリがない。

「そうだね。行こうか」

手を繋いでまた街を歩く。
ほんの少し先に目当てのトラットリアがあった。

こじんまりとした店内だったが、美味しそうな匂いと沢山のお客さんと料理であふれている。

道がテラス代わりでテーブルとパラソルがあって、気持ちよさそうだったが、そこは流石に人気らしくいっぱいで。
店の奥の方に座った。
それでも、店内もかわいらしくてとても素敵だ。

魚介が美味しいということで、羚汰に任せて注文する。
新鮮なお魚や貝類をふんだんに使ったパスタや、有名な産地らしくレモンを使ったピザなど。

イタリアに来て、そう言えばずっとイタリアンだが、全く飽きることは無い。

そんな話をしながら、楽しく食事をした。

デザートは、お店を出てまた歩いて別の場所に向かう。

有名なジェラードのお店らしい。

さっきのお店でお腹がいっぱいだったが、ジェラードは別だ。
どれも綺麗な色をしていて、とても美味しそうでなかなか決められない。

それぞれ注文して、分け合って食べた。

暑い日差しに、ジェラードの冷たさが染み渡る。


ジェラードも食べてますますお腹いっぱいになったのに、すこし歩くと今度は、レモネードのお店を発見する。

気になってお店を覗いて、やっぱり注文してしまう。

それを持ったまま景色のいい所に移動して、ぼんやり海を眺めた。
木陰に入ると涼しいくらいで。
爽やかな海風とともに、なんとも気持ちがいい。

冴え渡るブルーが、日の光にキラキラと美しい。

「すっごく素敵〜。羚汰、連れてきてくれてありがと」
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