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NEXT 【完結】
第80章 promessa
「そうなんだ...」

本場のカフェラテが飲めると思って期待していたのに。

稜は誰の目にも明らかなぐらい肩を落とした。

ちょうど飲み物が運ばれてきて、オレンジジュースを口にする。
レモネードとはまた違う濃いオレンジの酸味が、喉をくすぐる。

「ちなみに。イタリア全土に渡って、スタバはナイ」

「へっ?スタバがナイ??どこにも???」

「ここまで、どっか街中でスタバ見た?」

そう言われて思い返すも、確かに日本の街中だったら多少の田舎でもたいがいひとつふたつは見かけるスタバを、こっちに来てから一つも見ていないような気がする。
目新しい景色に見とれて、そんな事に気づきもしなかった。

稜が静かに首を横に振ると、羚汰がまたにいっと笑う。

イタリア来るのにあたって、いくつかガイドブックを読んだけど、そんな事書いてなかったようなー。

「前に話した、バールっていうのがあるからね」

「それ、読んだ!」

バールについての紹介は、どこかで読んだ気がする。
日本であちこちにコンビニがあるように、イタリアではバールが数多く存在している。と。

羚汰が随分前に言っていたのはこれかと、その時に思った。

そんな話をしていると、ガラスの器に入ったデザートが運ばれてきた。

「!ティラミスだ!!」

ティラミスも、イタリアに来てから初めて見る。

このティラミスこそ、日本で流行っていただけで、イタリアには無いのかと思っていた。

早速口に運ぶと、エスプレッソの香りとほろ苦さが爽やかなクリームがと相まって口の中で溶けてゆく。

「美味しいー!!」

「あはは。本当に幸せそうに食べるね」

そう笑う羚汰も幸せそうで、稜も嬉しくなる。

「幸せだもん」

素敵なイタリアのホテルで、
ロマンティックなディナーを食べながら、
大好きな人と笑いあって。
これ以上、幸せな時間はない。

「うん。俺も」

どちらともなく手が伸びて、テーブルの上で指を絡める。

キャンドルの光が羚汰の瞳を輝かせているのか、キラキラと光って吸い込まれる。

二人の間を阻むこのテーブルがなかったら、今すぐ羚汰の腕の中に飛び込みたいぐらいだ。

「稜...」

「なあに?」

呼びかけておいて、羚汰が横を向いてひとつ咳払いをした。

さっきまでのリラックスはどこへ行ったのか、少し緊張しているようだ。
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