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NEXT 【完結】
第80章 promessa
まるで、「キスしよ」と持ち掛けるぐらいの軽いテンションで。

思わず止まってしまった稜の唇が、そのまま羚汰に奪われる。

「...え?」

やっとその言葉を発した時、羚汰がごそごそ動き出し、ポケットから何やら取り出した。

稜の体の向こうで何やら両手で開けて、稜の目の前に持ってくる。

「ちょっと早いんだけど、これ」

目の前に差し出されたのは、指輪ケースで。
その開いた中に輝いているのは、大きな石を中心に細かな金の細工がほどこされたアンティークっぽい指輪だった。

「これ...」

「本当はさ。恥ずかしいんだけど。クラウディアに叱られちゃってさ」

昨日の夜、食後の後片付けを済ませる頃。
羚汰はクラウディアに捕まって何やら話し込んでいた。
そのスキに稜はシャワーを浴びて、部屋で待っているうちに眠ってしまっていた。


まだ学生だから。せめて就職が決まって、落ち着いたら。
そう思っていた羚汰を、クラウディアは戒めた。

本当に稜の事を愛してて、離したくないなら。
今すぐにでもプロポーズしなさい。と。


「プロポーズ...」

「そうだよ。俺は、ずっと稜と一緒に居たい。これから先もずーっと」

「...うん」

まだ言葉少ない稜に、羚汰が笑いかける。

「それは、あのクリスマスの時から変わらない。...変わらないから、まだ先でもいいかって思っちゃってたんだけど」

また羚汰の指がやってきて、風で稜の顔にかかる髪を横に撫で付ける。

「いつでもいいなら、今でも一緒かなって。てゆーか、スグがいい」

今度はしっかり目を見て、羚汰が笑いかける。

「結婚、してくれる?」


ホントなんだ。

さっきのは幻聴かと思ってー。

ぐっと込み上げる何かを抑えて、稜は何も言えずにいた。


頬を伝ったものを、羚汰がそっと指で拭う。

「ねぇ。返事、聞かせて...」

稜は慌てて首を縦に振る。

「する...するぅ!!」

声にならない声を振り絞って返事をしながら、気がついたら羚汰の首にしがみついていた。
羚汰が安心したように笑い出す。

「よかったー」

稜の体を1度ぎゅうっと抱きしめてから、羚汰が笑って促す。

「で、これ。受け取ってよ」

指輪のことを忘れていた。

箱から取り出した羚汰が、稜の左手にその指輪をはめる。


急に周りから拍手が起こった。
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