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NEXT 【完結】
第80章 promessa
無関心だと思っていた数少ない周りの人たちが、いつの間にか注目していたらしい。

羚汰の膝の上に座り、その首に半ばしがみついているのが恥ずかしくなってくる。

立ち上がろうと思っても羚汰にしっかり腰を掴まれていて、どうにもならない。

羚汰がイタリア語と英語で何やら早口に挨拶をして、周りのひとや奥から出てきたスタッフさんが微笑んでお祝いの言葉をかけてくれている。

言葉は分からないが、皆祝福してくれているのは分かった。

驚きが勝っていた気持ちに、嬉しさがどんどんプラスされる。

一通り挨拶がすむと、羚汰が稜に向き直った。

「うわっ。泣き過ぎ」

「だって〜」

羚汰がテーブルからナプキンを掴んで、ぼろぼろ泣いている稜の顔に押し当てる。

「驚いた?」

「驚くよ〜」

まさか、このタイミングでプロポーズしてくれるとは思わなかった。

就職が決まって、大学を卒業して、勤めだしてからー。
そう思っていたのは羚汰だけではなかった。

両親に挨拶に来てくれたことで、もうプロポーズのようなものかと、それで納得していた部分もある。

涙を止めたいのに、嬉しくて。嬉し過ぎて、なかなかとまってくれない。

きっと顔はぐちゃぐちゃで。
羚汰も呆れているだろう。

「...初めて会った時も、顔ぐちゃぐちゃにして泣いてた」

羚汰が頭を撫でながら、稜を抱きしめる。

「うん...」


あの時、実家で飼っていた犬のカイの余命が僅かで、看病に実家に通っていた。

歳のせいで目がほとんど見えなくなって、足腰も弱くなりトイレに行くことも出来なくなった。
それでも、稜が実家に帰ると立ちあがり、愛想を振りまこうと必死で元気なフリをしようとするカイ。

そのカイを思って、自分の部屋に帰ってから号泣したあの日。

羚汰が引越しの挨拶にやってきて、その姿を見られた。

「あの時、こーやって抱きしめてあげたかった」

やっと涙が引いたと思ったのに、その言葉でまた溢れてゆく。

しかし、今度は泣いても恥ずかしくない気がして羚汰にしがみついて涙を零した。

落ち着くまで羚汰が頭を撫で続けてくれる。

温かい愛にこころが満たされて、稜は顔を上げる。

羚汰と見つめ合うと、羚汰が堪えるように静かに笑い出した。

「ふっ」

「えっ。何?」

「顔すっごいことなってる。ぶっさいく!」

「!!ひど!」
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