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NEXT 【完結】
第81章 ばたばた観光
箱の中には、彼の家に代々伝わる指輪。

大きな石が光り輝くその指輪を見て、クラウディアはその時はじめて涙した。

「はじめた仕事が軌道に乗って、お父さんにもやっと認められてきてたのに...」

彼は長い年月をかけて、その地位を掴む僅かな所まで来ていた。

手紙のやりとりは続いていたもの、仕事内容などには一切触れてこなかったので、クラウディアは起業したことも知らなかった。

1度だけ訪ねたことのあるボロアパートから、街中のマンションに移り住む計画もあったらしい。
そこに、クラウディアを呼ぶ予定だった。

次々と聞かされる2人の未来に、パトリックはいなくなってしまった。

クラウディアは、貧乏でもよかった。
パトリックと一緒に居たかった。
今更そんな言葉を投げかけても、彼は帰ってこない。

その日は妹と泣き明かし、翌朝クラウディアは実家に帰った。

先祖代々の指輪は返そうとしたが、妹からクラウディアに持っていて欲しいと頼まれた。
きっとパトリックも貰って欲しかったハズだと。


その後、抜け殻になったクラウディアは親に勧められるまま見合いをし。
そのまま、愛のない結婚をした。

空っぽとなったクラウディアを、その旦那となったロメオは優しく包んでくれ。
2人はやがて愛し合う。
子どもにも孫にも恵まれて、今は幸せな生活を送っている。
数年前ロメオは他界したが、2人で暮らした家に今も住んでいる。


「自分の子どもや孫にはこの指輪はやれないって、しまい込んでたんだって」


羚汰が、就職が決まって。
仕事が落ち着いて。
それから、稜と結婚ー、と考えていた。

それを知ったクラウディアが、この指輪と共に羚汰をけしかけた。

本当に愛しているなら、仕事とか、お金とかじゃない。

「自分たちのようになるなって。愛し合っているなら、すぐにでも一緒になれって」

「...それがこの指輪」

指輪を見つめる稜の、反対の手を羚汰が握る。

「そ...。だから、ケシカケられた、って言葉は悪いけどさ。そのハナシ聞いて、俺も気が変わった、っていうか...その」


確かに、プロポーズの時羚汰は言っていた。

これから先もずっと一緒にいるつもりだ。

だから、早くてもいいかと思ったって。
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