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第81章 ばたばた観光
「それと。指輪はさ。そのイキサツもあってだけど、古いものだから価値はほとんどナイだろうって言われてて」

一昔前ならともかく、今の時代オパールは他の宝石に比べて手に入りやすく。安価なものも多い。

プロポーズするのに、指輪もナイし。
と、羚汰がのたまった時に、思い出したようにクラウディアが部屋の隅の棚の中から出してきた。

金庫じゃなかった。
だからそんな高価じゃないハズだ!

そう羚汰は主張する。


「だけど、さっきのオバちゃんがさ」

船でやたらと指輪を覗き込んでいたマダムが、珍しい石で価値がある指輪だと言っていた。

オパールは石の色や石の中でキラキラした部分の色やカタチによって価格が変わってくる。
宝石好きのマダム曰く、この指輪は石の中に見られるキラキラしたものの色合いが多彩な上細かく、珍しい色をしていて。
大きさも大きく透明度も高いことから。
きっと価値があると言い張った。

「...どのぐらい?」

婚約指輪の値段を聞くのは無粋な気がしたが、あのマダムの“高価”がどのくらいなものか。


「2~3万?」

へっ。
思ったよりも少なくてなんだか拍子抜けする。

「ま、あのオバちゃんがどこまで信用できるかってハナシでさ。もっと安いかもだしさ」

ベラベラと話し続ける羚汰に、なんだか違和感を感じる。


「...どの通貨で?」


「えーっと。...ユーロで?かな」

ユーロって確か今...。

頭の中で計算する。

「さ、さんびゃくまん???」


「うーん。まあ、そうなるよね...」

2人で顔を寄せて、改めて指輪をマジマジと見つめる。

貰った時よりも、船の中で高価なモノだと言われた時よりも。
もっともっと光り輝いているようで。

持ち上げている手が小さく震えてくる。

片手に300万円の指輪...。

そんな自分の手が信じられない。

「...私なんかが貰って、本当にいいの?」

今更、突き返すワケにもいかない。

「いいんだって。オバちゃんが大袈裟なんだって」

羚汰は、マダムを疑ってかかることでなんとか平静を保っているようだ。

「それに。クラウディアから交換条件を突き付けられてるんだ」

交換条件?

「結婚式に招待してくれって。その時ぜったい日本に行くって」
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