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第81章 ばたばた観光
「んで。まあ、スグにスグってワケじゃなくて。2~3年か。ひょっとしたら、もうちょっと先かもなんだけど。ピザとかカジュアルなほう、俺にやってみないかって」

「!!経営ってこと!?」

「うん。そう。勿論トップはアキラさんとかグループの上の方の人で、俺は雇われ店長...みたいなカンジかな」

まだざっくりしたプランしかないらしく。
その辺りの構想を含めて、一緒にやらないかと誘われたらしい。

それってスゴイ事なのでは?

「でもサスガに俺、そこまでの自信なくて」

自分の店を持ちたいのが、ゆくゆくの夢ではある。
その足掛かりとして、どこかで勉強や修業はしないといけないと思っていた。

「イタリア来て、前にお世話になったことのあるシェフとか。あ、あと、あのエンリコにも相談したんだけど」

口をそろえて「やってみたらいいじゃん!」って即答だった。
皆豪快といっていいほど、ポジティブで。
羚汰も、やってみようかという気になってきた。

ただ、気になることがあってー。


「...稜は、どう思う?」

「えっ、私?」

きっと仕事は忙しいと思う。
土日は関係ないだろうし。
夜も遅い。
間違いなく引っ越して都会に行かないとだし。
その先、転勤があるかもしれない。
出張も多いだろう。

「それでもー。ってゆーか、それもあるから、かな。俺は、稜と一緒になりたい」

本当は、プロポーズする前にこの話をするべきだったのかもしれないけど。
...ついて来てくれる?

少し震える声でそう言った。


どうしたら?と、聞く前に、羚汰はもう決めているんだ。

そう思った。

私は、どうしたい?

と、いうか。...どう伝えればいい?


「あのね」

しばらくの間のあと、言葉を選んで話し始める。

「私、今回のイタリア旅行の話を聞いた時に」

「うん」

ずっと手を繋いだままなので、汗ばんできた。
でも気にせず強く握り直すと、羚汰も力を少し入れてきた。

「羚汰は、卒業したらイタリアで生活始めると思ってた」

「へっ?」

手を見つめていた視線を、羚汰の目に移動させる。

綺麗な形の瞳が、驚いて大きく開かれ、少し揺れている。


「日本で就職するのって、私の為じゃないよね?もし、そうだとしたら、私は反対」

一段と羚汰の瞳が大きくなる。
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