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第81章 ばたばた観光
「すっごい美味しい!濃いんだけど、濃いだけじゃなくて...。香りがなんだろう、爽やかでー。えーと、なんだろう、...とにかく、日本で飲むのより断然美味しい!」

「そりゃよかった」

自分の語彙のなさに、カプチーノの美味しさを上手く伝えられないのがもどかしい。
いくら力説しても、美味しい、ぐらいしか言えていない。
同じくカプチーノのカップを傾けながら苦笑いする羚汰を見てハタと気付く。

「え?あ!羚汰が入れてくれるカフェラテは別よ!!」

「ぶっ!...あぶねぇ。何?気を使ってくれてんの」

吹き出し、羚汰が笑ってカップを落としそうになっている。

「だってー」

冗談とかではなく、なんだかもう別の飲み物みたいなカンジだ。

「ほら、見て、あのマシーン」

稜が振り返ると、カウンターの中に、大きなエスプレッソマシンが見える。
年季も入っているが、すごく手入れもされているのだろう。
なんだかオーラがある。マシンなのに。

「家にあるやつもそこそこイイヤツだけど、ここまで本格的じゃないしね。あとは、豆と、職人の腕。また、違うバールに行ってみよう。また味が違うよ」

「そうなの?」

バールには、得意分野じゃないが、お店によって特徴がある。
レストランのバール、お酒メインのバール、カフェのバール、パンを沢山置いてるバール、ジェラートのバール...などなど。

それは随分前に羚汰が説明してくれたのと、今回予習したガイドブックで理解した。

ここのバールは、お惣菜やパンなんかが沢山並んでいて、軽食が出来るバール。のようだ。
お惣菜やパニーノをお持ち帰りする人や、店先のカウンターでエスプレッソを引っ掛ける人が多い。

「俺がやりたいのは、日本でこんな店を流行らすこと」

!!

そうだった。

にいっと笑う羚汰が、今まで以上に素敵で、思わず見とれてしまう。

自信に満ちていて、静かに闘志を称えた目だ。

それから、ふっと力が抜けるように笑って、稜の顔に手が伸びる。

小さくビクッと固まっていると、指がいつものように唇をなぞる。

僅かに触れる指先から、全身に電気が伝わったみたいになゾクゾクする。

「...泡、ついてる」

そう言って、ミルクのついた指先を羚汰が舌で舐めとった。

「やだ...」

羚汰が説明してくれてたのに。
何を考えてるんだか。

「今回はホント」
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