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NEXT 【完結】
第82章 イタリア最終日
ホテルの正面にはどこかで見たことがある高級車が横付けしてあった。

どこでだったかなー?と思いながら、狭いロビーに入ると車の持ち主が唯一置いてあるソファでふわぞり帰って待っていた。

かけていたサングラスを上にズラして、羚汰と稜を確認するとそのままの格好で手を振る。

「...アレックス?」

「そ。空港までちょっと距離あるから頼んどいたんだー」

羚汰が、イタリア語で挨拶を交わす。
どうやら盛り上がっているのは、羚汰のプロポーズをどこかで聞いたかららしかった。
アレックスのじゃれるようなパンチを、羚汰の体にいくつも浴びている。

アレックスは稜にも挨拶してきて、稜も慌ててボンジョールノの返す。

稜が、一目でアレックスだとすぐに分からなかったのには理由がある。

それまでは、着古したシャツやTシャツだったアレックスが、三つ揃えのスーツをバリッと着こなしていたからだ。
落ち着いた色合いの金髪無精髭と無造作ヘアもスーツに似合っている。
イタリアの高級雑誌の表紙から飛び出してきたカンジだ。
まるで別人のようでなんだか落ち着かない。

そんな稜をよそに、2人はスーツケースを車へと運ぶ。
稜も慌てて手伝ってトランクに入れるのを手伝った。

そんな稜の左手に輝く指輪に、アレックスが気づいた。

おっと言うような表情を一瞬して、何やら早口でしゃべりながら車に乗り込んでいる。

クラウディアから、本当は孫にあたる自分が貰うはずだったとでも言っているのだろうか。
高級な石だ。使わないとしても売る方法だってある。

不安に思いながら後部座席に乗り込む。
羚汰が助手席だ。

指輪、貰うのをやはり辞めたほうがいいのではー。

そう思っていると、羚汰がそんな稜に気づいてアレックスの言葉を日本語にしてくれる。

「稜が貰ってくれて、アレックスも嬉しいってさ」

「本当!?」

「シ!シ!」

日本語の意味が分かったのか、アレックスも親指を立てて稜に示している。

「クラウディアの家が色んな花やハーブに囲まれていたの覚えてる?」

家だけでなくて、広大な敷地には色とりどりの花が咲き乱れる庭や、ハーブ園があった。
そのハーブたちを使ってお茶を作っていた。

「あれは全部、アレックスの亡くなったじーちゃんの贈り物なんだってー」
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