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NEXT 【完結】
第14章 料理教室
12月入って初めての水曜日。

ラコルテである、エンリコ・ブルーノの特別講習会の日である。

稜は、朝、いつもの時間に起きて、歯科に向かった。

会社には親不知を抜くと言ってある。
どうせなら、本当に歯科に行ってしまえばいいと気付いた。

久しぶりの歯科で、メンテナンスを受ける。
虫歯もなくほっとしたが、本当に近いうちに親不知を抜く必要があるらしい。
予約して行ったが、稜の通う歯科はいつもいっぱいで少し待たされる。流石に朝一番の予約なのでそんなに時間はとられなかったが、お会計までに時間がかかってしまった。

講習会に遅れそうになり、慌ててお店に向かう。

なんとか間に合った。

受付でコートや荷物を預け、持って来たエプロンを着る。手にノートとペンを持って、空いている席に向かった。

キッチンにほど近い所に、四人がけのテーブルが3個ほど合わせて置いてあり、その上に簡単なコンロが2台。そして、いくつかの材料や調味料、お皿などが並んでいた。

その前に、椅子だけが20席ほど並んである。

稜は、その端っこに座った。
皆、エンリコ・ブルーノに近づこうと前はいっぱいだ。

ギリギリかと思ったが、まだ少し時間があった。
もう何人か来る人もいるらしい。
ざわざわと皆、エンリコの登場を待っている。
参加しているのは、少し年配のマダムが多いようだ。
平日なのだから仕方ない。

「こんにちは」

リョウだ。
こっそり話しかけてくる。

真っ白なコックコートに、今日はいつもの髪を綺麗に後ろにセットしてある。ピアスも見当たらず、印象が違う。

「えっ。なんか違う人みたい」

少し照れたようにしてリョウがつぶやく。

「それが今日俺...」

リョウが言いかけたところに、キッチンのほうから声が掛かる。

「Ryo!!Viene qui!!」

イタリア語だ。リョウ、の後はさっぱりわからない。

「Sì. Va là ora」

しゃがんでいたリョウが立ち上がり、返事をした。

「!!!」

これには、稜だけでなく、周りのマダム達も驚いてリョウを見た。

にっこり一礼して、その場を離れるリョウ。

去り際、リョウの口が動く。

『あとでね』

軽くウインクして去って行った。


それからしばらくして、講習会が、始まった。
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