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第22章 カップルとしての初デート
「...わかった」

エントランス横の階段の影に羚汰を連れて行く。

「5秒よ」

「ん」

笑顔の羚汰が近づいてきて、稜は目を閉じる。

羚汰の唇が、稜の下唇を挟むように優しくキスをする。

薄く開いた口から羚汰の舌が稜の唇を舐める。

稜は気持ち良いその感触に、舌を出そうとして慌てて思いとどまる。

「んっ。おしまいっ」

「んー。もうちょと」

「ダメー。10秒はあったもん」

羚汰の手を引っ張って、駅までの道を急ぐ。

サスガに観念したのか、羚汰も稜に並んで歩き出した。


「今日のデート、どこ行くか考えた?」

「うーん。それが思いつかなくって」

「そうなの?じゃあ、部屋に籠ってHする?」

「ちょっと!」

田舎の駅に行くにも、朝はそこそこ人通りがある。

「夜までには考えるし!」

「ふーん」

「車がこっちにあったらねー、遠出出来るけど」

「稜、車あるの?」

「実家に置いてる。一時期持って来てたんだけど、たまにしか乗らないのに駐車場代が結構するから。今はほとんど母が乗り回してる」

「どんなやつ?」

「小型車だよ。赤色ー」

「赤!?」

稜は服でもカバンでも地味目の色が多い。

「うん。車ぐらいは、と思って」

そんな話をしていたら、駅の側で赤色の看板が目に付いた。

「あ!」

「ん?」

「今日、ココ行こうよ」

稜が差した先には、とあるアミューズメント施設の赤い看板が付いたバス停らしきものがあった。

「ああ。そういえば。ちょっと前に出来たヤツ」

「今日は平日だから...7時過ぎと8時過ぎにバスがあるよ。だいたい1時間おきなんだね。帰りは...最終が11時」

「いいね。ここにしよっか」

「7時20分のに、間に合うかな~」

「8時20分のでもイイじゃん」

「だって、バスで15分かかるって。8時のだと遊べる時間が短くない?」

ぷっと羚汰が笑う。

「どんだけ満喫するつもりなの」

「だって。どうせなら」

「...稜、電車来るよ」

「あっ、待って」

駅の改札に今度は稜が引っ張られてゆく。

ギリギリのところで電車に乗り込む。

「稜がぼーっとしているから」

「ぼうっとしてないし。バスの時間メモろうかと思ったんじゃん」

「もう覚えたでしょー」

「会社終わって家帰らないと、服と靴これじゃね」

「そうだねー」
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