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第32章 ウワサ その2
仕事が終わり、羚汰を待つ間にお弁当の下準備を済ます。

お弁当の残りのようなかたちで晩御飯を済ませ、念入りに入浴もする。

考えるのは、どうやって羚汰のことを自然に聞き。

いっぺんに聞こうとするからいけないのかもしれない。

今日は、友だちのことでも聞いてみようか。

大学、バイト先、それとも地元。親友と呼べるような人はいるのか?

そんなことを考えながら髪を乾かしていると、携帯が鳴る。

羚汰にしてはまだ早い。

画面を見ると、千夏だ。


「もしもしー」

「稜ー?」

「どうしたの?また何かあった?」

千夏のことだ、また貴之くんがらみだろう。

「うん。それが...」

何やら深刻そうな声に、稜も改まる。

「どうかした?」

「今、1人?彼がそばにいたりする?」

「ううん。まだ帰ってない。もう1時間は後かな」

まだ10時前だ。最近は早く帰って11時。今週は忙しいようなことを言っていたので、もう少し先になるかもだ。

「その...ラブラブなの?彼とは」

「うん。...まぁ」

少し言葉を濁す。千夏にも相談しなきゃなと、話そうとしたとき、千夏がいつもと違うことに気づく。

「何?どしたの??」

「いや、それがさ。言いにくいんだけど」

どうやら千夏は、稜があの隣人と付き合うということに驚き、また従姉妹を通じて、羚汰のことを調べたらしい。

「有希子は賛成してたけど、ごめん。私気になって、また調べたの。そしたら...。驚かずに聞いてよ...」

「...何?」


あのなんでもずけずけと言う千夏が、言いにくそうにしている。

また調べたのも驚きだ。

確かにあの時、最初あまり賛成した風ではなかった。


「彼、地元に子どもがいるらしいの」


「!!」


「3年近く前に、認知したって」


目の前の色がざっとなくなってゆくのを感じた。


「...聞いてた?」

「ううん。...結婚してる...わけないか」

「うん。なんでも、沢山いたセフレの1人が妊娠して、大騒ぎになって、彼の親とか出てきて、おろさせようとしたらしいんだけど、裁判にまでなって、結局認知のカタチで...」

千夏の説明が頭に入らない。


ふと、羚汰が必ず避妊をすることを思い出す。

先日、着けずにしようとした時、かなり焦ってめずらしく声を荒らげていたー。
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