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NEXT 【完結】
第33章 wrong gossip
「あの...。仕事のことではないのですが、ちょっとアドバイスを貰えたらと思って」

「はあ。いいですよ」

社長に言うのにもどう切り出していいか、うまい言葉が出てこない。

「その...友だちの悪い噂をですね、他から聞いてしまいまして。それを、その、確かめたいな、って思うんですけど」

谷本社長は、そんなしどもろどろの稜の話を真剣に聞いてくれている。

「その、どうやって聞いたら、失礼じゃないか、というか、関係をこじらせないですむかなって...」

「はあ。なんだかややこしそうですね」

「すいません!変な事聞いて。社長なら、こういった聞きにくいことも聞くノウハウなんかを御存じかなと...」

「そうですねぇ。そのお友達との関係性にもよると思うのですが。冗談として会話が出来るのなら、冗談っぽく聞くのも有りですが...」

「それはちょっと...」

「そうですか」

流石の社長も、ほんの少しの情報で解決策というワケにはいかないようだ。
かといって、これ以上の内容を相談するわけにもいかないし...。

「そうですねぇ。あとは、『こういう悪い噂を聞いたのだけれど、本当なのか心配になって』とまあ、そういった風にですかね」

「なるほど...。ありがとうございます」

稜は深々と頭を下げる。

そういう前置きをしてから聞き始めるのがいいかもしれない。

少し笑顔になった稜を見て、谷本社長がまだ続ける。


「でも一番は、そんな悪い噂の話なんかしないことですよ」

「えっ!」

「だってあくまで噂でしょう。どんな内容かにもよりますけど、本当のことならいつか事実が明るみになります。悪い噂なんて根も葉もないものが多いですしね」

「...はぁ」


聞かないほうがいい、とは思ってなかったので驚きだ。

聞かなきゃ、話をしなきゃ、とばかり思っていた。


「さ、もう遅いですから帰りましょう。閉めますよ」

「あ、はい」


谷本社長に促されるようにして、事務所を後にした。

帰りの電車の中で、言われた言葉を思い出す。


一体どうするのが正解なの?


聞かずにいて、いつかは羚汰から話してくれるのだろうか。
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