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第35章 お迎え
「ちょっと、離してっ」

稜が、ぽかんとしている4人の羽交い絞めからなんとか逃れてようともがく。

「すいません。さっきからずっとノックしてたんだけど、皆さん気付かなかったみたいなので、入ってきちゃいました」

なんとか振りほどいて、説明を始めた羚汰の手首を捕まえ、部屋を出ようとする。

「か、帰ろう」

「えー、まだ挨拶してないよ?」

ドアに手を掛けた瞬間、先回りした瞳にドア前に立たれてしまった。

サスガ、身が軽い。

「...ひょっとして、彼氏サンですか?」

「こんばんは」

羚汰がにっこり笑顔を振りまいた。


一瞬の間があって、歓喜の渦に巻き込まれる。

耳をつんざくような叫び声が響き渡る。

さっきまで捕まえていた稜を放り出して、今度は羚汰を捕まえ椅子に座らせ、取り囲む。

「えっ!ちょ!!」

4人がかりで至近距離で囲まれ、サスガの羚汰もビックリしている。


だから来ない方がいいって言ったのに...。


4人で早速質問タイムだ。

足早に質問を次々と繰り出し、観念したのか羚汰も答えている。

稜もコートを脱いで、隅っこに座る。


「仕事あがりですか?」

「うん」

「高崎さんを迎えに?」

「もちろん」

また歓声が広がる。

「すごいイケメン~!」

「あは。ありがと」

麻衣がうっとりしてそうつぶやくと、慣れた感じでそう答える。

その返答にもまた歓声があがる。

「どこのカフェで働いてるんですか?」

「...カフェ?」

「え?バリスタなんでしょ?」

稜がみんなにわからないように手を合わせる。

羚汰はすぐ察しが付いたらしい。

「うーん。ナイショ?」

「えー!なんで!?」

「みんなでカフェしに行くのに~」

「ん?稜がヤキモチ焼くから!」

「えー!いいじゃないですかぁ」

「“稜”だって!きゃ」

「若く見えますね~。ホントに26歳?」

そういえば、前に年齢を聞かれたときに咄嗟に26歳と言ってしまったのだ。

稜が慌てて羚汰を見る。

一瞬目が合ってしまい、咄嗟に勢いよく逸らしてしまう。

「...よく言われるんですよね」

羚汰の鋭い視線を感じる。

しかし、なんとか合わせてくれたらしい。

やばい。

羚汰に、みんなに嘘ついたことがバレてしまった。
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