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第36章 お泊り会
「えー、ひょっとして、彼の分も?」

「うん。まぁ。ついでだしね。こないだは、朝時間がなかった私に変わって作ってくれたけどー」

そこまで話して、ハタと気づく。

この話題、避けてたのに。

「ふーん」

案の定、千夏からあまりよく思ってなさげな声がする。

「千夏」

有希子がたしなめるように声をかける。

まだ10時頃で、約束の12時にはなってなかった。

でも、もう千夏は止まらないようだ。

「弁当ねぇ。利用されてるんじゃないの?」

「そんなこと...。作ろうかって、言い出したのは私だし」

「で、ホントに隠し子はいないって?」

「...うん」

「そんなのいくらでも嘘つけるじゃん?」

確かにそうだ。証拠などなにもない。
羚汰の言葉だけだ。

「男なんて、いくらでも自分の都合いいように嘘つける生き物なんだからさ!」

「千夏」

有希子が言葉が強くなってきている千夏をまたたしなめる。

「私は、ほんとーーーに、稜が心配なの!」

「わかるけど」

「だいたい、って、私が会ったの随分前だけどさ。髪の毛の色、すっごい明るかったし、ピアスいっぱいしてなかった?なんか馴れ馴れしく話し掛けてきたし、あんまいい印象じゃなかったんだよね」

「あんたイケメンだって騒いでたじゃん」

有希子が呆れたようにツッコミを入れる。

「イケメンはイケメンよ?でもチャラかったって話よ!観賞用は別にチャラくても中身がゲス野郎でもいーもん」

有希子が苦笑いしている。

「で、なんで稜なの?あんだけのルックスで、大学にもバイト先にも可愛い若い子がいっぱいいて!隣に住んでるってだけで、好きになる??」

稜も常々そのことは気になってはいる。

羚汰も何故なのかはわからないと言っていたぐらいだ。

「歳が一回り近く離れた、オバサンだよ?確かに稜は、美人かブスかって言ったら美人だろうけど。この程度の美人なんて、掃いて捨てるほどいるよ?」

「千夏!」

有希子が強めにたしなめる。

「いいよ。本当のことだもの」

「そんなの理屈じゃないってずっと言ってるでしょ?千夏もしつこいなぁ」

有希子が間に入ってくれる。どうやら、何度もやりとりした会話らしい。

「だからね!私、思ったの!」

千夏がフラつきながら、仁王立ちに立ち上がる。

「面接する!」
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