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第36章 お泊り会
「...え?」

「私と有希子で、その子がほんとーに稜のことを大事にしてくれるいい奴なのか、はたまた隠し子のいるただの遊び人なのか」

「...面接」

「なるほど。考えたね、千夏」

納得したのは、有希子だ。

「でしょ。...今思いついたんだけど」

「ただの遊びで稜と付き合っているなら、うちらの前に出ては来ないだろうね」

確かに、この二人の面接は相当キツそうだ。
稜ですら、その場面を想像してゾっとする。

「稜、千夏の思いつきだけど、いい案だと思う。私も会ってみたいし」

「...うん。わかった」

昨日、女子会のカラオケにも入ってきたぐらいだ。きっと会ってくれるだろう。
稜は、信じている。

「じゃ、今電話して!」

「えっ、今?」

「そーよ!今すぐ来いって!!」

「いくらなんでもそれは無理でしょ」

「...たぶん、まだバイトだと思う」

「とりあえず、電話しなよー!」

2人に見守られながら、とりあえず電話をかけるが、案の定出ない。

LINEで、終わり次第電話して欲しいとメッセージを入れる。

クリスマス前の土曜日だ。きっとバイトが終わって気づくのは遅くなると思われた。
いつもは稜に会うために早く帰っているが、今日は出かけるときに千夏の家に泊まりに行くと伝えてある。

ふと、有希子が何かに気づいたらしい。

「でも千夏、ここに来させるの?」

千夏の新居は、羚汰のバイト先にある駅から、電車で40分、徒歩20分の距離だ。

「終電に間に合うかな」

「いや、私が言いたいのは、貴之さんの留守に、若いオトコをこの家にあげてもいいのかってハナシ」

かなりの上機嫌だった千夏の顔から血の気が引く。

「...マズいかな。流石に」

「いくら稜の彼氏でも、流石にねぇ」

千夏の新居から徒歩20分のその最寄駅の周りは、24時間のファミレスやカフェどころか、遅くまでやってる居酒屋だってない。
コンビニぐらいしかない、小さな田舎の駅なのだ。

3人ともお酒を飲みまくっているし、どこかに車で出かけるのも無理だ。

「また日を改めてで、いいんじゃない?うちらもお酒を飲んでて判断能力が欠けてるかもしれないし」

「そうね。面接に来るつもりがあるかってのがわかれば、今日はいっか」

千夏も流石に今日は諦めたらしい。
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