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第36章 お泊り会
「...ああ。ごめん、嬉しくて腕振り上げたら、手が滑ってスマホ投げちゃった」

「ええっ」

「割れてはナイけど、はしっこ傷がいっちゃったっぽい...」

一転してテンションが低くなってしょぼくれてる羚汰を想像して、思わず少し吹き出してしまう。

「ちょっと、笑うとこじゃないし!」

今度は、電話口でむくれている。

電話の向こうで百面相している羚汰がとても愛おしい。

「ごめんね」

「...嘘じゃないよね?」

「うん...」

「うー!マジで嬉しい!!」

今も一緒に住んでるかのように過ごしている。

はじめはそんなつもりなかったのに、いつの間にかほぼ毎日朝まで過ごすようになってきた。

だからきっと、ほとんど変わらない。

でもそれでもこれだけ喜んでくれるのなら。

「じゃあ、明日、待ってるから」

「先に私のが帰ってるよ」

「そっか...。うん。待ってて」

その後も電話が切りがたく、結局羚汰がタクシーを拾ってマンションに着くまで、たわいもない会話をした。

電話を切って、千夏と有希子が待っている1階へ恐る恐る降りると、待ちくたびれてソファーとカーペットの上でゴロゴロとしていた。

「やーっと降りてきたー」

「ごめん。気付いたら時間経ってた」

時計を見たら、もう2時が来そうだ。

「罰として、コーヒー入れて〜!!」

「わかった」

「あら、千夏。もう飲まないの?」

「飲むけど、コーヒーも飲むの!!」

千夏に豆の場所などを聞きながら、湯を沸かし、ドリップの用意をする。

「ほんっとに、ラブラブなんだね」

「え?...そんな」

照れる稜に、千夏が半ば呆れたように続ける。

「ってゆーか、彼のが稜のこと、超好きだよね。私勝手に、逆かと思ってた」

イキナリ何のことを言っているのかわからない稜に、有希子がヒントを出す。

「何分か前に、あんまり稜が降りてこないから、千夏、様子を見にあがったのよ」

どのシーンだろう。きっと、立ち聞きされたのだ。
顔が赤くなる。

「ごめん。ウチらに会うの本当は嫌で、稜と喧嘩でもしてるんかと思ってさ。...内容はよくわかんなかったけど、喧嘩どころかめっちゃラブラブしてた。稜もさ、彼の前だと、超可愛い声とか出すんだね〜」

ますます顔が赤くなるのが、稜にもわかる。

「...そんな。別に」

「やだー、かわいい」
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