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第38章 羚汰の秘密
以前からセフレのような彼女しかいなかったと言っていたし。すぐ別れるとも。
モテるだろうから、その場限りも沢山あるだろう。
そういうのは覚悟していたけれど...。

「...まさか、お金もらったり、したの?」

「!それはナイ!そんなウリみたいなコトはしない!...ホテル代は出してもらってたけど。それだけ」

「そう...」

少しほっとする。
お金欲しさにしていたとしたら、流石に引く。

「...稜が、俺の噂を聞いたって言う度に、この事かと思ってちょっとビクついてた。いつかは聞いてしまうだろうから...せめて、俺の口から説明したかったんだけど。...なかなか言い出せなくて」

羚汰はつないだ手を見つめている。

稜も目線をどこに持っていけばいいいかわからず、同じく手を見ていた。

つないだ手が、さっきからひんやりと冷たい。


「幻滅した?」

羚汰が恐る恐る、稜の顔色を伺っている。

やっと、“サイトウ リョウ”と別人だったのを理解したところなのに。
羚汰の裏の顔を見せられて、動揺しないほうがおかしいぐらいだ。

「幻滅...はナイけど...」

「...けど?」

「やっぱり、ちょっと...驚いた」

他にこの気持ちを表現する言葉が見つからない。
嘘ではなく、不思議と嫌悪感はナイ。

付き合う前の事だ。
付き合う前の色々あっただろう事を、イチイチ気にしていたらキリがない。
それに、それらを、稜が『許す』というのは違う気がする。

だからといって、簡単に納得は出来ない。

「あれから、本当にやってないし。彼女が出来て、そーゆー関係は全て切ったって言いまくってるから、もう誰も頼んでこないし。ほんとに、俺...」

羚汰が言葉に詰まる。

稜もどんな言葉を発すればいいか、出てこない。


沈黙のあと、羚汰がひとつため息をついて立ち上がる。

「稜、明日も仕事だよね。もう、寝て?...俺、シャワー浴びてから、ここで寝るから。稜はベッド使って」

「え。そんな。なら、私自分の部屋に...」

羚汰が慌てて稜の手を握り返す。

「お願いだから、隣の部屋に行くのはやめて。ここはもう2人の部屋なんだから」

今にも泣き出しそうな羚汰の顔に、胸が締めつけられる。
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