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第38章 羚汰の秘密
きっと羚汰は、私が自分の部屋に戻ったら、そのままもう戻らないと思っているんだ...。

確かに、一度自分の部屋に戻ったら、こっちに来るタイミングを逃しそうだ。

羚汰の手が微かに震えているのがわかる。

有希子に聞いた事がある。
夫婦の場合だけど、どんなにひどい喧嘩をしても、一緒に寝た方が良い。お互い背中を向いて布団の端っこでもいいから、一緒に寝るべきだって。


「じゃあ、いつも通り一緒に寝よ?ソファーなんて、風邪ひいちゃうよ...」

「でも」

「今は、ちょっと色んなことを聞いたから...。ホントのところ、どうしていいか、何て返事したらいいか、わからない...」

素直な今の気持ち。
理解出来るかどうかわからないが、とりあえず時間が必要なことは確かだ。

心を決めて、羚汰の不安そうな目を見つめる。

「でも、私も羚汰が好き。...それはきっと変わらない」

「稜...」

羚汰がゆっくりと稜を抱きしめる。

いつもと違い、どこかまだ戸惑いが残っているのか、柔らかくそっと包み込むように腕が回される。

「本当、ごめん...」

羚汰の声が震えている。

この短い時間にきっと色々考えたに違いない。
稜が、以前そうだったように。

小さく震える背中にそっと手を回す。

「ごめん...」

「もう、何も言わないで」

そっと体を離して、羚汰の顔を見上げる。

今にも泣き出しそうに充血させた目が視界に収まる。

その瞼の上に、そっとキスを落とす。

「羚汰も明日は朝からバイト?」

「...うん」

「じゃ、早く寝なきゃね」

反対の瞼にもキスを落として、立ち上がり寝室へ移動する。

「...先に寝るね。オヤスミ」

「オヤスミ...」


羚汰の視線を全身に浴びながら、寝室へ行き、布団をかぶる。

向こうの部屋で、カタカタと小さな音がする。

そういえば、洗い物もなにもかもを置いてきた。


今日は久しぶりにシタかったのに...。

到底そんな気分にはなれなかった。


隠し子がいると思った時と、また違うショックが稜の体を駆け巡っている。

見た目と違って、羚汰は真面目なんだと思っていた。

誰かれ構わず、平気でそういう事が出来てしまうということかー。

サキさんも...。
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