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第44章 Situation
「ちょっ、何立ち上がってんの」

「さ、洗い物しよー」

ボウルなどは焼いている間に洗っていたが、一気に焼くために使った2つのフライパンや、生クリームを泡立てたボウル、そして食べ終わった食器などは洗わないといけない。

「えー。やだ。行かせない」

手を引っ張り返して、稜をまた膝の上へ戻し、その体に抱きつく。

「もう。りょーたっ、ぎゅーは済んだでしょ」

笑いながら羚汰の頭をポンポンと叩くと、稜の体に顔を押し当てているので表情は見えないが、なんだか拗ねている。

「稜は平気なんだ」

「へっ?」

「これから4日も会えないのに」

大袈裟な。

と思ったが、口に出すような雰囲気ではない。

今日の昼から、羚汰が4泊5日で実家に帰る予定なのだ。

「4日でしょ?すぐだよ」

今度は優しく頭を撫でる。
ふわふわの髪の毛は、すこしまだ湿っている。

「あー、実家帰るのやめよっかな!」

「ダメだよ。おじいちゃん、楽しみにしてるんでしょ」

羚汰のおじいちゃんが、今年数えで100歳になるらしく、この正月は親戚一同大集合らしい。
子どもが6人、孫が14人、ひ孫が20人ほどいるらしい。
めったに全員集合することはなく、今年は記念なのでおじいちゃんの子どもに当たる、羚汰の父親とその兄姉達が気合が入っている。
羚汰には、実家から新幹線のチケットが送られてきた。

おじいちゃんは、とっても元気な100歳で、未だにタバコは吸うわ、自転車を乗り回すわ。無類のコーヒー好きで古くからある喫茶店をはじめ、流行りのカフェも行く、近所で知らない人はいない有名人なんだとか。
羚汰も小さい頃はよく遊びに行って、可愛がってもらったらしい。

「うん。そーなんだけどね...」

「めいっぱいお祝いしたげてよ」

羚汰がしぶしぶ顔をあげる。

「俺は稜を心配してんの!」

「ん?私?」

眉間に深くシワが入った羚汰の顔を覗きこむ。

「...見合い、でしょ」

そうだった。考えないようにしていたけど。
羚汰に言うと気まずいので、あれから一切触れていない。

「いつなの」

「えーっと、...3日、かな」

見合い相手が、仕事の都合上、正月がいいと言うのでその日に決まったのだ。

「...そう」

沈黙が流れる。
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