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第45章 お見合い
「空人たちも気になるからって、ずっと待ってたんだけど。混んだらいけないからって、ついさっき帰ったのよ。稜、あんたは晩御飯食べて帰るでしょ」

「んー、もう疲れたから、自分のとこ帰るよ。このまま駅まで送ってー。なんか、車に酔ったみたいで、食欲ないし」

「あら、そうなの?明日からもう仕事だっけ??」

本当は休みだが、母親には仕事と言っていた。
明日は、昼過ぎに羚汰が帰ってくる。

「うん」

車はそのまま走って、駅に着く。

それまで見合い相手の話をしたり、母親のほうの話を聞いたりして、あっという間だ。

「で、お断りするのね?」

稜が車から降りると、母親が最後にそう確認をしてくる。

「うん。おばさんによろしく」

「もー、やーねぇ。いいお家だし、いいご縁だと思ったのにねぇ。でも、確かにあれでは困るし、もう、やだわぁ...」

「気をつけて帰れよ」

ぶつぶつ言う母親を遮るように、父親が声を掛けてくれる。

「うん。ありがと」

この時ほど、賑やかに同調してくれる母親と、優しく静かに見守る父親の、2人の存在を有り難く思ったことはない。

手を振って車を見送ると、稜は急いでマンションに帰った。

羚汰との部屋に帰りたかった。


大急ぎでマンションに帰り、羚汰の匂いの残るベッドに崩れるようにして倒れ込む。

化粧がそのままだが、ぐったり疲れたのと車酔いもあって、落とす余裕はない。

ベッドの上で、コートとワンピースを脱いで、なんとかストッキングも脱ぐ。

下着姿になって、布団の間に潜り込む。

もちろん変えたシーツやカバーだが、どことなく羚汰の匂いがして落ち着く。

あ、羚汰に連絡をしなきゃ。

電車の中で、とりあえずの報告は済ませた。

マンションに無事着いたって伝えなきゃ...。

稜は、スマホを握り締めたそのまま深い眠りについた。



早く羚汰に会いたい、その思いが夢にまで現れる。

あの指に触れられたい。

唇に、舌に、やさしく包まれたい。


柔らかくしっとりとした舌が、稜の唇をなぞる。

それから、いつもの親指が唇に触れる。

それだけなのに、稜は吐息を漏らす。


舌を少し出して、その羚汰の指を舐める。

「ヤッバイ、超エロい...」
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