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第51章 旅行 〜前編〜
「はい。じゃ、出発するよー!」

羚汰がエンジンをかける。

「もう忘れ物はナイですか?」

助手席の稜の顔を身を乗り出して、にやにやと見つめる。

「ごめんって。もう、大丈夫!」

稜の荷物がとても多く、車と部屋とを2人で3往復した。
用意した食材がかさ張ったのだ。

ロッジには調理器具はあるが、食材は勿論、調味料や飲み物はナイとのことで、用意していたら結構な量になってしまった。
運びやすいように、スーパーからダンボールを貰ってきて詰めた。
ダンボールが4つに、ちょっとした海外にでも行けるぐらいのスーツケース、が稜の荷物だ。
荷物を積んでから、「やっぱり、あれもいるかな?」と1つ取りにも帰って、すっかり出発予定時刻を過ぎている。

「ホントに?」

「ホントにっ!」

ムキになって羚汰のほうを向くと、チュッと唇が重なる。
少し驚いていると、羚汰が嬉しそうに稜の唇を指でなぞる。

「ん、じゃ行こか」

シートベルトを締めて、走り出す。

ユウに借りた四駆を、羚汰が運転して行くのだ。

“フォレストランド”がある辺りは、標高が高いので、まだ雪が残っているらしい。

稜の車で行くことも考えたが、山道が厳しいのとチェーンがないので行くのは無理だ。

ユウの車は、スタッドレスタイヤを履いているので少々の雪は大丈夫だし、勿論チェーンもある。

「この車、運転したことあるの?」

運転に慣れた様子の羚汰に尋ねる。

「うん。よく運転するよ。夏とかよくこの車で遊びに行ったなー。海とか。あ、そのロッジにも」

「そう...」

ユウたち4人でバカ騒ぎをしながら乗り回す姿を想像して、なんだかしゅんとなる。
あの4人でいたらすこぶる目立つ集団だろう。

「ユウたちと、野郎ばっかだよ?稜が心配するよーな事は何もナイって」

稜の考えている事が分かったのか、羚汰が慌てている。

慌てているということは、やっぱり...。

「だから、違うって!引きこもり気味のユウをさ、いろんなとこに連れてっただけだよ。女のコとか引っ掛けたりしてないから」

「...私、まだ何も言ってないのに」

羚汰は墓穴を掘った。

そうなんだ。海で女のコをナンパしまくっていたワケだ。
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