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第51章 旅行 〜前編〜
「いやいや!マジで!ユウ、女性アレルギーみたいなとこあるし。ミズキそんなことしたら、奥さんに殺されるって!あそこマジ怒らせたらこえーんだよ。だか、誓ってそーゆー事は...」

「アレルギー?」

「...恐怖症ってやつ?」

ハーフで金持ち、という境遇でモテない筈はなく、ユウは小さな頃からモテモテだった。
元々大人しい性格だったユウは、幼い頃から積極的な女のコが苦手だった。
中学生になると、女のコが群がって、2日に1回は告白され、益々苦手に。
それなのに、勝手に争奪戦が始まったり。
机に置いているノートや鉛筆がなくなったり。靴箱から靴が消えたり。
待ち伏せや後をつけられたり、ストーカーめいた事も沢山あって。
女のコにあまりにもモテるものだから、仲良かった男の友達からも疎まられ、孤立するようになった。
中学の3年の頃には不登校になり、高校には行っていない。

中卒はマズいと思って、なんとか家庭教師で大検は取ったものの、引きこもりはエスカレートしていき。
去年の春に、環境を変えるため、こっちに越してきた。

「そうだったんだ...」

「やっと引きこもりが外には出るよーになったけど、女のコはまだ無理みたいだなー」

軽く引きこもりとは聞いていたが、そんな理由とは思わなかった。

「だから!野郎ばっかでむさ苦しい集団だって。ヤキモチ妬いてくれたのは嬉しいけど」

「...違っ」

運転席を見ると、にやにや笑う羚汰と目が合った。

そーゆーのじゃないと思うんだけど。

信号にかかると、膝の上の手が取られ、指がからまり繋ぐ。

「羚汰?」

「んー?」

信号が変わってもつないだまま発進する。

「危なくない?」

「大丈夫。オートマだもん」

手を繋ぐのはいつものことなのに、なんだか気恥ずかしい。

「...ミズキさんのとこは、恐妻家なの?」

何を話せばいいか、必死で会話を探してさっきの話を掘り起こす。

「あははっ。そう!あそこは、専門の頃に知り合ったコと結婚してんだよね。奥さんもパテシェで。確かホテルに勤めててー」


羚汰がバイト先のスタッフの事を色々話してくれて、すっかり詳しくなった。

「えっ、じゃ、お店のスタッフって」

「うん。そー、アキラさんの趣味で顔で選ばれてる」

どーりでイケメンや美女ばかりなワケだ。

「...そんなのアリ?」
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