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第51章 旅行 〜前編〜
振り返ると、優しい声とは裏腹に不敵に笑う羚汰と目が合う。
目の奥が笑っていなくて、ぞくりと鳥肌がたつ。

「ご要望なら、オシオキしたげるよ?あとでゆーっくり」

耳元に近づいてそう囁いてから、首筋のあたりに歯を立てて噛み付く。

「きゃっ!そういう意味じゃなくてっ」

焦って否定し逃れようとする稜に、堪らずといったカンジで吹き出す。

「あはは。冗談。面白すぎでしょ」

「もうっ!」

「手伝うよ」

パエリアは、エビや魚介、パプリカなどを彩を考えて綺麗に並べてフライパンで作り、そのままテーブルに持って行っていた。
温めたいが、このまま火にかけたら確実に焦げる。
レンジで温めるには皿に移してしまわないといけないが、その折角綺麗に並べたのが崩れてしまう。
かといって、冷えたままでは...。

「すごい綺麗だけど、皿に移すよ?」

「うー」

「仕方ないじゃん?綺麗にしてんの、十分見たからさ」

殻付きのエビや貝も外される。

淡々と作業する羚汰の隣で、稜はしぶしぶステーキを焼きなおす。
少し火が通るが、こちらはどうしようもない。

なんとか温め直して、テーブルにつく。

「稜?そんな落ち込まないで」

「うん...本当にごめんね」

クリスマスの時の羚汰のように、一人でスマートに用意したかったのに。
結局、羚汰に手伝ってもらってしまった。

大きなテーブルだが、二人並んで座る。
机の上に置いた手に、羚汰が手を重ねる。

「せっかく旅行に来たんだからさ、楽しく食事しよ?ね?」

「羚汰...」

「ほら、サングリア、どっち飲む?」

「じゃあ、赤」

さっき白を少しだけ飲んだが、赤はまだだ。

綺麗に注がれるサングリアを見ながら、気を取り直す。

ぐじぐじしたって、どーしようもない。
羚汰の言う通り、この旅行は楽しいものにしたい。

「はい。乾杯」

「乾杯!」

寝起きの乾いた体に、サングリアが染み込む。

「美味しーい!お店で飲んだのより美味しいかも!」

「あはは。自分で作っておいて」

お昼にいちごと団子しか食べていないので、お腹ペコペコだ。
2人で笑いながらも、ガツガツ食べた。
量が多いかと思ったが、そうでもなさそうだ。

「この肉美味っ!!」

「だね!フンパツしてよかったー」
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