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第52章 旅行 〜中編〜
寝室を羚汰がワインを持つ手で器用に開け、稜を通してくれる。

「...うわーっ」

ガラス張りの天井からは、明るい月が見える。
雲が多少かかっているようだが、その雲さえ明るい月が照らして幻想的な色を出している。
明るい月のセイでか、星はお風呂場からのほうが見えたかもしれない。

持っていたいちごやグラスを、ソファーがあるテーブルに置いて、ベッドに駆け上がる。

ベッドから見渡すと、ホテルのあるあたりだろうか、向こうに少しだけ明かりが見える。
ホテルの明かりと言うより、ホテルの近くの街灯といったカンジだ。

ホテルからさほど遠くないところに、一般のロッジがある。
それに続く街灯だろう。

お風呂でだいぶ時間を過ごして、さっきキッチンで時計を見た時にはもう深夜2時を軽く過ぎていた。

ホテルやロッジの明かりは消えているのか、それとも森で見えないのかわからない。

後はほとんどが山に囲まれている。
一か所切れたところがあって、随分遠いようだがぼんやりと明るい。

「あそこは?」

気になって、ワインを開けようとしている羚汰に聞いてみる。

「んー?どこ?うーん。通って来た町かなぁ」

羚汰の説明によると、途中駅があって、そこに小さいけどスーパーやらパチンコ屋やらコンビニなんかがあったらしい。

「随分山奥なんだね」

「あはっ。誰かさん、ずーっと寝てたもんね」

シュワシュワと泡がしたグラスを渡される。

「はい。乾杯」

「乾杯」

微炭酸が風呂上りの喉に心地よくて一気に飲み干す。

ベッドの上にいちごも運んで、その上で食べる。

「美味し~い!いちごと合うね!でも、あれだけあったのに、いちご後これだけ?」

「まさか、もう半分ほど冷蔵庫あったよ」

空になったグラスに羚汰が注いでくれる。
お店で慣れているのかとてもスマートだ。

「ありがと」

「稜はこれでお仕舞ね」

羚汰がワインノボトルをタオルで巻いて床に置く。

「えっ。もっと飲みたい」

「風呂上りにそれ以上飲んだら酔っぱらうでしょ」

「えー。ダメ?」

確かに、少し顔が赤くなってきているのを感じる。

でも景色もよくて、いちごも美味しくて、すごく気持ちがいい。

「でもサングリア、料理しなきゃって思って、ガマンしてあんまり飲んでないから、それは飲みたいな~」
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