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第53章 旅行 〜後編〜
「コーヒー入れてくれるんじゃなかったの?」

「今お湯沸かしてるもーん」

稜の作ったパンケーキが出来上がったのに、コーヒーを入れるのを真横で付き合わされる。

やっと出来上がって、テーブルに座ろうとすると、羚汰が稜を連れたまま座ろうとする。

「え。ちょっと?」

「はい。稜の席は、俺の膝」

6人掛けのテーブルなのに、なぜわざわざ膝に...。

どうしようかと戸惑っていると、羚汰が無理矢理座らせる。

「ひゃっ。重いでしょ」

「いつもは喜んで膝に乗ってくるじゃん~」

「ゴハン食べるときは乗ってナイよ!」

ニヤニヤして何か企んでいる顔だ。

「あーん。食べさせて?」

「そんな...」

いくらなんでも恥ずかしすぎる。

「羚汰...下ろして?」

「あれ~。オカシイな~。俺のオネガイは何でも聞いてくれるんじゃないの?」

羚汰がドヤ顔で稜を見つめる。


バレてる!!!


「昨日から、何かがオカシイなって思ってたんだよね~」

羚汰の手が、稜のカーディガンのボタンを外しにかかる。
その手に、指を絡めるようにして動きを鈍らせる。
さっきやっと着替えたばかりだ。

「俺が何かしようって言い出すと、絶対してくれんじゃん?」

「...そうかな?はい、あーん」

パンケーキを大きく切って、羚汰の口に放り込む。

「...ぐむっ」

実はそうなのだ。
この旅行期間中、稜はなるべく羚汰のリクエストに応えるようにしてきた。

「気のせいじゃない?いっつもと一緒だよ」

「...なんで隠すの?俺は嬉しんだけど」

何と言っていいやら。

「はい、こんどは稜の番」

羚汰がカットしたパンケーキを口に入れる。
落ちそうになるのを手で抑え込む。
続けていちごも差し出され、ぱくりとした。

「かわいい」

フォークとナイフを持ったまま、稜の体を抱きしめる。

「これって、期間限定?」

「え?」

羚汰の膝の上に横座りした稜の体を抱きしめたまま、羚汰がつぶやく。

「こんな風に稜が可愛いの、旅行の間だけ?」

羚汰が望むいちゃいちゃのリクエストに応えるというか、拒まないでいたら、やっぱり可愛いんだ。

密かに、旅行の間中に羚汰が出すエロリクエストに、全部答えてきた。
羚汰はいつも通りだったから、そんな激しいリクエストはなかったが。
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