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第53章 旅行 〜後編〜
古民家で借りた傘1つに2人で入って道を急ぐ。

「寒〜っ!」

「すごい降ってきたね。明日、帰れるかなぁ」

「そしたら、もう一泊すればいいじゃん?」

「えっ。会社あるし、帰らなきゃ」

羚汰が冗談めかしてではなくするりと言うので、つい稜もするりと答えてしまう。

「ん...。稜は、もう一泊したいな、とか思わないんだ」

拗ねたような羚汰に、しまったと気付かされる。

「思うよ!思うけどさ。ほら、金曜日お休みもらって旅行来たじゃない?だから、また月曜日も、ってワケにはちょっと...ね」

「ふーん」

「羚汰も、朝からバイトでしょ?」

「月曜は定休日」

そうだった。

「また来よう?ここじゃなくても、また旅行しよ?」

「...そうだね。それにまだ、もう1日あるし」

早めに食事を済ませたので、まだ7時を回ったばかりだ。
なんとか、羚汰も気持ちを持ち直したのか、勢い良く車に乗り込んだ。

車で、街頭にほのかにライトアップされた一般のロッジを抜ける。
半数ほどのロッジに火が灯っている。
流石にこの雪で、外でバーベキューをしている人は居なさそうだ。

「うわっ。綺麗〜」

それから数分ほど山道を走って、森家の専用ロッジだ。

玄関と、ほのかにリビングに電気がついている。
少し離れていただけなのに、建物に入るとなんだかほっとする。

暖房がつけてあっても、広いリビングはひんやりする。

「部屋行く?暖炉があるから、付けよっか」

「え!暖炉あったっけ?」

リビングに暖炉があったのは気づいていたが、寝室のは見た覚えがない。

階段をあがって部屋に入ると、壁面に確かに暖房がある。

ガラス張りのほうに気を取られて、全く気づかなかった。

「ホントだ」

「稜が風呂入ってるあいだに、暖炉つけとくよ」

羚汰が、にこっと笑って横に積み重ねている薪をくべ始める。

「ほんと?いいの?」

「せっかくだし」

「じゃ、シャワーだけ...。行ってくるね」

あのジャグジーを今から溜めるのには時間がかかりそうだ。
寒いけどシャワーだけにー。

ドアを開けて、下りていこうと思ったのに、腕が掴まれる。

「どこ行くの?そこ、シャワールームあるから」

「へっ」

羚汰に言われてよくみると、今まで気づかなかったもう一つドアがある。

「全室バストイレ付きだよ」
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