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第56章 カラダでお支払い
予定通り、ラコルテの前、少し離れた交差点で少し待つ。

3時過ぎても、『お店の前に着いたよ』というLINEが既読にならず。

店の遠くにいた稜も、段々お店に近づいてゆく。

お店の入口に『close』の看板はあるものの、何人かまだお客さんが見える。

誰かが長居をしているのだろうか。
稜も千夏や有希子と来た時に、時間を忘れてしゃべりまくったりするから、人のことは非難できない。

でも、あんまり時間もないし。

再びLINEを送信するも、返事はなく。

30分近く待って、もう最後のお客も出たようだし、時折玄関周りを通り過ぎる店員さんに声をかけようか迷う。

お店の玄関はやはり諦めて、横にある従業員用の入口をウロウロする。
玄関と違って、中の様子はわからない。

「何かご用ですか」

不意に後ろから声がして、びっくりして振り返る。

「ひゃ、すいませんっ」

そこには、高そうなコートな身を包んだ、見たこともないような美青年が佇んでいた。

背が高いというほどではないが、モデルかのようなすらりとした手足に、サラサラの長めの前髪。
切れ長の目にかけた、銀縁の細いメガネが色っぽさを助長している。
歳はきっと稜ぐらいか、もう少し若いだろう。

落ち着いた雰囲気だが、少し威圧的なその姿は、稜を圧倒する。

「...ひょっとして、リョウさん?」

怒っているようではないが低くて少し響くような声がして、稜は縮み上がる。

お店のスタッフさんだろうか。

「へっ、あっ、はい」

それにしても、ラコルテは美形揃い過ぎる。
にっこり笑って見つめられると、顔が赤くなってしまう。

確か、オーナー、じゃなくて、アキラさんって人の趣味って聞いた気がする。

「どうぞ中で待って下さい。斉藤くん、もう出てきますから」

さり気なく腰に手が回って、抱え込むようにされる。
その自然な動きに、体が密着して至近距離になったことにしばらく気づかない。

「いえいえ!!ここで、ここで待ってますから!!」

慌てて体を引こうとするも、がっちり掴まれていて、身動きが取れない。

表情は笑ってはいるが、その瞳の向こうにぞっとするような妖しい光が見えて、体がすくむ。

そのまま従業員用のドアを開けて、スタッフの控え室に連れていかれる。

階段を上がり、通されたのは高級そうなソファや机が並ぶ部屋だ。
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