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第56章 カラダでお支払い
「つづき?」

いつになく神妙な羚汰になんだか不安になる。

「ここでいい?」

足早で歩いていた羚汰が、おもむろにカフェの入口前で止まる。
1階がラーメン店で、横の細い階段を上がっていくと小さなカフェがあるらしい。
入口にある可愛いレトロな黒板に、チョークでスムージーの文字が大きく踊っている。

4時前のこの時間は開いている飲食店はカフェ系か、ラーメン、牛丼、ぐらいしかない。
でも、お昼ご飯は買い物をしてからのつもりだったのだが。

「プレゼントは今度でいいから。座って話そ」

稜は、不安を募らせながら頷くしかない。

細い階段を上がっていくと、コンパクトな机と椅子が並んでいて、窓が大きく明るいからか、思ったより広く感じられる。
小さな店内ながら結構沢山お客さんで賑わっていた。

2人で向かい合う小さな席に通される。
それでも、土曜のこのカフェタイムによく座れたと喜ぶべきだろう。

メニューが置かれ、見てみると、ランチのセットは時間が終わっていたが単品はどれでも頼めるようだ。

どうやらイチオシは『トマトと牛すじのカレー』らしい。
隣のテーブルで食べている人がいて、いい匂いが漂っている。

他にも、フォカッチャサンドやパスタ、ホットケーキ、ワッフルなど、メニューが豊富で迷ったが、結局2人ともカレーを注文した。

「アキラさんに会ったとき、会ったことある気がしたんだけど。よく考えたらさ、ユウくんに似てるんだよね。当然だけど」

ユウは背も高くどちからというと少しがっしりしている。
堀が深く精悍な顔つきではあるが、まったりおっとりとした雰囲気だ。

それに比べて、アキラは背は高めなものの、そこまで高くなく。
どちらかというと細身でしなやか。
顔つきは、女性的といってもいいほど整っているものの、切れ長の目がシャープさを演出していた。

「うん。雰囲気違うけど、やっぱ似てるよ。特に声は結構似てる。ユウは嫌がってるけど」

小さな小鉢にサラダがちょっと入ったものが運ばれてくる。
セットではないものの、カレーには必然的にサラダが付いてくるらしい。

それをフォークでつつきながら、羚汰がため息をつく。

そんなに言い出しにくいことなんだろうか。

「アキラさんは、物腰丁寧だから初めて会った人は大概騙されるんだけどさ。人に有無を言わせないほど横暴で。でも、仕事は出来るんだよね」
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